変わる新入社員教育-「ぬか床」から羽ばたくフレッシュマン
注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。
今年も新入社員を迎える時期がやって来た。
一刻も早く一人前に育ってもらうべく、各企業とも新人研修・教育方法については工夫を重ねているところだが、毎年変わっていく若者たちの気質を反映して、風変わりな研修が採用される事例も目立つ。
そんな新人研修の「今」を追った。
真新しい研修ルーム内に似つかわしくない、「ツーン」とくる異臭が漂っているのは、大手金融機関A社の新入行員研修会の一コマだ。
新人全員が、料理研究家として有名な平野レミ氏の指導のもと、一人一人が自分の「ぬか床」を作っているのだ。
言うまでもなく「ぬか床」は、漬物の代表格である「ぬか漬け」作りに欠かせない土台だ。
そんな「ぬか床作り」を、A社だけでなく、10社以上の企業が新人研修プログラムに採り入れている模様だ(本紙調べによる)。
昨年からこのプログラムを採り入れたA社の研修担当者であるBさんに尋ねると、そのポイントは、「一人一人の個性がぬか床に反映される」という点だという。
ぬか床作りの手順は、米ぬか、塩、水、唐辛子、昆布等を混ぜて、毎日かき混ぜて手入れを行い、発酵を促すという流れだ。
丁寧にかき混ぜるほどによいぬか床が出来ると言われている。かき混ぜる過程で、作り手やその家庭の常在菌がぬか床に加わることで、各家庭独自の風味が出てくるのもよく知られている。
Bさんは「ぬか床作り研修」の狙いをこう語る。
「新人には、それぞれの個性を大事に伸ばしてもらいたい、その多様性が自身と組織の成長につながる、と言っているんですがなかなか分かってもらえない。そこで、ぬか床作りで自分の個性を知ってもらうことにしたんです」
ぬか床は作っていくうちに、それぞれの個性が鮮明に表れることが多く、またどれが一番素晴らしいかを評価することもまた難しい。
そうしたぬか床作りを通じて、自分自身の個性と向き合い、他人とは違う自分の生き方を考えさせる、というのがこの研修プログラムの狙いだという。
研修後半では、同じグループの研修生同士が少しずつぬか床を出し合って混ぜ込み、新しいぬか床を作るというプログラムも経験する。
異なるテイストのぬか床が融合することで、全く新しい味わいのぬか床に生まれ変わるという体験をさせ、「チームで力を合わせると単純な足し算以上のことができる」という実感を経験させようという狙いだ。
この体験は、A社の多くの新入社員の心に響いているようだ。
配属された支店で同僚や上司に「なぜぬか床を持ってないのですか?」と質問し、周囲を困惑させるケースも出ている模様だが、新人に感化される形で、全員がぬか床・ぬか漬け作りを楽しむようになった支店も少なくないという。
そんな支店の一つである代々木上原支店を訪ねてみると、ロビー全体にかなりパンチの効いた古漬けの香りが漂っていた。店内を見渡すと、その匂いに顔をしかめている若者客もいるものの、年配の顧客には「何となくホッとする」「敷居が低くなって、安心していろいろ相談できる」と極めて好評だという。
自分のぬか床にはめいめい、好みの野菜を漬け込むのが一般的な行員の対応だが、中には「意外な組合せで何かが生まれるかもしれない」と考え、会社から支給されたモバイルPCをぬか床に漬け込んだり、自分の素足をぬか床に突っ込んで仕事をする猛者もいるという。
ぬか床に漬け込まれたPCは、正確な因果関係は不明ながら「些細なトラブルが発生しなくなった」「バッテリーのもちが改善した」(行員)と予想外の結果を生んでおり、また「素足をぬか床に入れて仕事をすると、足がひんやりして気持ちいいので能率が上がる」という効能も出ているようだ。
デジタル全盛の現代に、敢えて「偶然」に身を任せる「ぬか床作り」が今後、ビジネスマンのマインドをどう変化させ、日本社会がどう変化するのか、そしてぬか漬けの消費増加に連動する形で、米の消費も拡大することになるのか、注目が必要だ。