「蒙古タンメンN本」大ピンチ ― G20会合で袋叩きに

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。

 


グローバルな「協調」志向と「分断」志向の対立が、予想もしない領域に影響を及ぼし始めている。
激辛料理ファンからこよなく愛されている「蒙古タンメンN本」が、国際会議の舞台上で名指しで痛烈な批判を受けたのだ。


これは、4月11・12日に米国・ワシントンで開催されたG20財務相中央銀行総裁会議での出来事だ。
会議の休憩時間に、南アフリカのムボウェニ財務相が、他の出席者に向かって語りかけた。


「思えば、地球温暖化問題をめぐりパリ協定を締結するまでの議論の過程は、国際協調を深めるうえで本当に思い出深い、有意義なものでした。それなのに昨今の情勢は本当に嘆かわしい。どうでしょう、地球には他にも深刻な問題があります。新たに、何らかの国際ルールの枠組みを決める議論をスタートさせませんか。もう一度、国際協調の大切さを思い出すためにも、絶好の機会だと思うのです」


自国優先主義が跋扈している現状を憂慮していた各国の出席者は「それはいいアイデアだ」と口々に賞賛。
すると、ムボウェニ財務相は部下に指示して、出席者らに1枚のグラフが描かれた資料を配らせた。
描かれていたのは、この15年間の「全世界の二酸化炭素濃度」と「全世界の唐辛子類の生産量」の推移だ。


これによると、温室効果ガスの代表格である二酸化炭素の世界平均濃度は直近で405ppm、この15年間で8%の増加を示している。これに対し、唐辛子類(乾燥)生産量は同期間に90%超という大幅増を記録している。
ムボウェニ財務相は、このグラフを片手に熱く語った。


「示されているように、世界の唐辛子生産の伸びは、我々が憂慮している温室効果ガスの伸びをはるかに凌駕しています。唐辛子類は、少量であれば問題ありませんが、過剰に摂取すると人体の健康に深刻な影響を及ぼすことが知られており、さらには土壌や海洋などにカプサイシンなどの激辛成分が流入することで、不測の事態を招くリスクがあります」
「我々を襲っているのは地球温暖化リスクだけではありません。地球激辛化の危機も目の前にあります」


この熱弁に、伝統的に辛い料理を食べる習慣があるインド・韓国・中国などの代表者らは身構えたが、ムボウェニ財務相の次の発言に安堵した。

 

「世界に辛い料理を好む地域があることは私も知っていますし、その文化は尊重します。私が問題だと考えているのは、正気の沙汰とは思えない激辛料理をビジネスにしている一部の国です」

 

再び部下が配布した資料には、激辛料理に欠かせない唐辛子の国別輸入量が掲載されており、ダントツ1位の国として日本が示されていた。
さらにグラフの隣には、「ビジネス化された激辛料理」と題して、「蒙古タンメンN本」上板橋本店前に並ぶ激辛ファンの行列と、同店の名物である「北極ラーメン」の画像が並んでいた。


「これは確かにやり過ぎだ」「このような料理で、地球環境と人体が破壊されるのは耐えられない」等、出席者らの批判の矛先は、日本から出席していた麻生財務相に集中した。
突然の事態に戸惑った麻生氏だったが、「これを日本という国家全体の問題にしてしまうと収拾が付かなくなる」と即座に判断、その場で「これは蒙古タンメンN本というラーメン店特有の個別の問題であり、わが国で責任をもって対処したい」とコメント、その場を収めた。


これを受けて、ムボウェニ財務相は「では麻生さんの言葉を信じて日本の対応を待ちましょう。もし次回6月のG20財務相会合までに進展が無いようであれば、過剰な激辛料理を規制する国際ルール導入に向けた議論を始めましょう」と発言、出席者全員が賛同した。

 

この1件は、G20という国際会議が舞台だっただけに、全世界で速報された。

最も衝撃を受けたのはもちろん、「蒙古タンメンN本」のS店主だ。
朝のニュース番組で、自分の店が国際会議で袋叩きに遭っている光景を見て愕然としたが、不屈の闘志で知られるS店主はすぐにマスコミを集めて記者会見を開いた。
財務大臣がなぜ我々の店に口をはさむのか」
「宇宙一辛い味噌ラーメン『ほたる』で有名なYぐら亭、石焼麻婆豆腐の『M覚』など、激辛料理店はいくらでもあるのに、なぜ我々だけなのか」
「そもそもなぜ南アフリカの政治家に我々が非難されなければならないのか」等々、S店主はその憤りを1時間にわたって語り続けた。

しかしこの日午後の菅官房長官の会見では、「6月に福岡で開催されるG20財務相・中銀総裁会合に向けて、政府として責任をもって一定の対応をします。内容は検討中です」というコメントを繰り返した。
政府筋は「S店主の言っていることは正論だが、G20での議論の流れで蒙古タンメンN本がスケープゴートになってしまった。今さらどうしようもない」としている。

 

こうした動きを受けて、日本各地や世界中から、激辛料理の擁護派と撲滅派が蒙古タンメンN本の各店舗の前に集結し、激しいぶつかり合いを繰り返している。
10連休直前の26日には、7,500名の擁護派と9,300名の撲滅派(いずれも警視庁調べ)が西池袋店前で激突、「地球を激辛から守れ!」という撲滅派と「何言ってるんだか分からない!」という擁護派の小競り合いが池袋地区全域に拡散する騒ぎが発生した。

 

世界経済について討議するために設営された、本年6月のG20財務相中央銀行総裁会議が激辛問題討議の舞台に転用されることが確実となった今、財務省職員は「何で蒙古タンメンN本の問題を財務省で捌かないといけないのか」と無力感にさいなまれているようだ。

 


突然、不条理なリスクが襲ってくることが増えた現代社会。

予断や油断は禁物の時代を、それぞれがどう生きていくか、真剣に考える必要がありそうだ。