エチゼンクラゲに立ち向かう男たち

日本沿岸各地で未曾有の漁業被害を巻き起こしているエチゼンクラゲの異常発生。その原因としては,エチゼンクラゲ独特の繁殖メカニズムに加え,中国沿岸域における経済発展がもたらした海水の富栄養化,また地球温暖化とも関連する水温上昇等が指摘されているところである。将来的にはこうした原因究明から抜本的対策が生まれる可能性があるが,目先の被害軽減のための決定的な打開策がない状況が続いている。
そうした中,普段は漁業とは何の縁もない男たちがエチゼンクラゲ撲滅に向けて立ち上がった。

米国・ニューヨークの自宅で本紙記者に対してエチゼンクラゲ撲滅に向けた意気込みを語ったのは,K氏(27)。ご存知,ニューヨークで毎年開催される「ホットドッグ早食い競争」を5連覇中の伝説のチャンピオンとして,全米にその名をとどろかせる日本人だ。K氏は「僕の早食いは趣味だと思われがちですが,これはビジネスなんです。早食いで収益を稼ぐ,言い換えればまさに『早食いで飯を食う』のが私の職業です。今回のエチゼンクラゲの事件については,ニュースを見ながら心を痛めていましたが,日本海沿いの4県5市23町村から合同でオファーを頂いたので『これこそ自分の仕事だ』と直感,即諾しました」と語る。
そんなK氏によるエチゼンクラゲ撲滅策はもちろん,「食べてしまう」ことだ。大きいもので体重100kg以上にもなるエチゼンクラゲを早食いできるのか,という疑問に対して,K氏は「ホットドッグのような乾燥した食べ物で100kg食べるのは難しいが,ほとんどが水分のクラゲであれば全く問題ない」と自信を見せ,「先日シミュレーションをしてみたが,1時間で600匹はいける。1時間の休憩を挟めば何度でもやれます」と驚異的な数字を口にした。
K氏によれば,休憩時間・睡眠時間を勘案した1日当たりの最大稼働時間は,10時間程度。つまり,K氏1人で1日当たり6,000匹のエチゼンクラゲを消化するという恐るべき量だ。さらにK氏は「エチゼンクラゲは膨大な数で,1日に6,000匹を食べても焼け石に水。米国から総勢1,000名の早食いネットワークの仲間を連れて行き,チームで大量消化を実現したい」とし,目標として平均で1人1日当たり4,000匹,全員で1日当たり400万匹のエチゼンクラゲを消化するというとてつもない数字を掲げた。この量であれば「漁業被害対策としては相応に意味がある数字」(漁業関係者)となることから,日本海沿岸各地では,米国からの早食いファイターたちの来日を心待ちにしている。

エチゼンクラゲのDNAに,横綱の恐ろしさを刻み込んで,二度と日本に近づかないようにしてあげますよ」と不敵な笑みを浮かべるのはご存知,第64代横綱のA氏。
年末の格闘技イベントで,タレントのBさんとの対戦が決定していたが,Bさんサイドで,地元・浦和での餅つき大会出演とのダブルブッキングが判明,「地元行事重視」という理由で対戦が急遽キャンセルされた。
横綱サイドが新たな対戦相手を探している中で岩手県宮城県福島県の太平洋沿岸3県から持ち込まれたのが「横綱VSエチゼンクラゲ」という異種生命体の対戦カード。横綱の突っ張りは,普通の人間が受けると即死すると言われており,「水中であっても横綱の突っ張りを受ければエチゼンクラゲはひとたまりもなく粉砕されてしまう」というのが大方の見方だ。このイベントはテレビ神奈川をキー局として全国中継,「24時間で何匹のエチゼンクラゲを粉砕できるか」という年越し番組として放映される予定だ。これまで,相手の敏捷な動きに弱かった横綱にとっては,非常にゆったりと動く重量級の相手はまさにぴったりの相手。また,課題であったスタミナについても,水中での対戦ということで浮力が働き,自らの体重を支えるエネルギーが大幅に節約できるため,問題ないのではないか,という見方が支配的。
しかし一方では,これまでの不甲斐ない戦いぶりから「今回も開始後2,3分でクラゲの毒針にやられてギブアップするのではないか」との見方も根強い。
様々な見方が交錯する中,真夜中の海での異種格闘技の結末に日本中のごく一部の注目が集まる。