トリノ五輪代表選考,ますます混迷−今度はボブスレーなどで

女子フィギュアスケートをはじめとして激戦が続くトリノ五輪代表選考レースで,また新たな激戦区が登場した。JOC(日本オリンピック委員会)は24日,ボブスレー(男子4人乗り)の代表選考を白紙に戻すよう,日本ボブスレーリュージュ連盟に指示を出した。
これは,女子フィギュアスケートの代表選考に特例として浅田真央選手の参加が認められることとなったことに伴い,有力6選手中3選手が落選するという厳しい現状を踏まえた措置としてJOCが決めたもの。本来であれば五輪の表彰台も十分狙える3選手をトリノに連れて行かないのはあまりにかわいそう,という世論に押される格好で,3選手のうち2名を,トリノ五輪の他競技の代表選手として出場させることを決め,白羽の矢が当たったのが「ボブスレー4人乗り」だったというもの。
ボブスレー4人乗りの場合,先頭の選手と最後尾の選手の2名は重要な役割があるが,真ん中の2名は基本的には発進時の推進力の役割を終えれば後は乗るだけ。全くの素人でも2週間程度訓練すれば何とかなる,ということで,スケートの代表選考で4位,5位に終わった選手を自動的にボブスレーの代表選手に内定させることになったもの。
4人乗り競技には女子種目がなく,男子のみとなるため,日本は男女混合チームで出場することとなるが,9名いる男子ボブスレーの五輪強化選手にとってはまさに寝耳に水の話。五輪出場権確保を目指して海外遠征を続けている中での決定に,「俺達を何だと思っているんだ」と激怒しており,チームワークの面で禍根を残しそうだ。
一方,肝心の当事者達も「ボブスレーじゃなくてスケートで行きたい」(安藤選手)「スピード系の乗り物はちょっと苦手」(村主選手)「男子と一緒だと緊張する」(浅田選手)「全身タイツ姿になるのが嫌」(荒川選手)「このままスケート界から追放されそうで怖い」(恩田選手)「せっかくなら真ん中じゃなくて先頭に乗りたい」(中野選手)と一様に消極的な反応。「4位,5位になるくらいなら最下位になったほうがいい」と考える選手が出ても不思議ではなく,本日から始まる最終選考に微妙な影を落としそうだ。
一方,スキーのクロスカントリー競技にも激震が走った。女子30km(フリー)競技に,女子マラソン高橋尚子選手が参入を表明したのがそれ。先月の東京国際女子マラソンで復活の優勝を果たした高橋選手は,「すっかりテンションが上がってしまった。とても北京までは待てない」とトリノ五輪への出場を直訴。冬季競技中,もっともマラソンに似ているクロスカントリー競技での出場を目指すこととなったもの。「スキーはやったことがない」という高橋選手は,ランニングシューズに「かんじき」を取り付けたスタイルで出場,1時間20分台での完走を目指し,早速練習に入っているという。
そのほか,年末の格闘技イベントを終えると当分対戦が見込まれない元横綱曙太郎氏も,カーリング競技の丸い石(ストーン)としての参戦に意欲を示した。「横綱の重みを思い知らせてやりますよ」と不敵に笑う曙氏だが,裸で氷上を滑ることになるため,あまりの寒さにギブアップするのではないかとの見方もある。
見る者にとっては,トリノ五輪にまた新たな楽しみが出来たといえそうだ。