政府,2006年問題対策で緊急立法へ−国民の勤労意欲の危機に本腰入れて対策

新年が明けた途端にクローズアップされた感のある2006年問題に,政府が通常国会で時限立法を提案,本格的に対策をとる姿勢を明確にしてきている。
2006年問題とは,言うまでもなく年間の休祝日数が例年になく少ないという問題。土・日・祝日および12月30日から1月3日までの年末年始を「休日」と定義した場合,2005年が121日であるのに対して,2006年は117日と4日も少ない(2007年は120日)。これは,2006年の祝日のうち「建国記念の日」「みどりの日」「秋分の日」「天皇誕生日」の4日間が土曜日と重なっており,振替休日の対象とならないことが主因となっている。
一旦増加した休日が減少することは,平日における勤労意欲と休日における個人消費の双方に悪影響をもたらす可能性が高いため,一部有識者の間では数年前から問題視されていたが,政府サイドはこれを無視。ところが,年が明けて自宅でカレンダーをめくった小泉首相がはじめてこの事実に気付き,「大至急対策をとるように」との指示を竹中総務相に与えたもの。
竹中大臣は「休日の実質的減少に対処するには,新たな休日を設けるのが経済学の常道」であるとし,2006年限りの特別祝日を設ける法案を通常国会に提出することを提案,首相から「その線で進めるように」との指示を得て早速具体的な祝日の選定に入っている。
現在のところ,「祝日と土曜が重なる月の月曜日または金曜日のうち,何らかの記念日になっている日を2006年限りの国民の祝日にする」という線で竹中大臣が選定に入っている。ほぼ採用が確実になっているのは,2月6日の「海苔の日」,4月17日の「なすび記念日」,12月22日の「酒風呂の日」。9月については,25日の「10円カレーの日」(日比谷松本楼が10円カレーを販売する日)にするか,29日の「招き猫の日」にするかで意見が割れている模様だ。
野党からは,2006年限定で祝日を制定する方針自体については大きな異論は出ていないが,「なぜ国民全員で海苔の日を祝う必要があるのか」「なすび記念日を祝日にすることを諸外国にどう説明するのか」「未成年者に酒風呂を勧めるのは道義的に問題では」という声が出ている。しかし竹中大臣は「海の日がOKでなぜ海苔の日がNGなのか。また,なすびはそのルーツはともかく,現在では日本料理を象徴する野菜のひとつ。食育を考える一日とする上でも有意義だ。酒風呂は飲まなければ未成年者でも問題ないだろう」と強気の姿勢を崩さない。
また,今のところ意見がまとまっていない「10円カレーの日」と「招き猫の日」については,「わが社の恒例行事を国民全体で祝ってもらうのは気恥ずかしい」とする松本楼サイドに対して,国会議員全員に招き猫を贈るなど激しいロビイング活動を見せる(社)日本招き猫協会が,「景気や経済を動機にして祝日を増やす以上,縁起のよい招き猫の日を選ばない理由はないはず」と強烈な主張を繰り広げており,やや有力になりつつある模様だ。
また,(社)日本海苔普及協会では,「2月5日は日の丸の代わりに海苔で作った旗を掲げましょう」という運動を開始するなど意欲的だが,「祝日に真っ黒な旗を掲げるのはいかがなものか」として政府サイドは消極的だ。
一方,当惑しているのはカレンダー業界。今回の報道を受けて業界各社には問い合わせや苦情が殺到しているが,「年が明けて『新たな祝日を作る』と言われても,既に売り切ってしまい対応のしようがない」と非常に困惑している。政府としても混乱を避けるため,独立行政法人国立印刷局でカレンダー貼付用祝日シールを印刷し,これを街頭で大量配布することで対応する方向で検討に入った。
また,金融機関などでは予定されていた取引期日が急遽休日になることに対処する必要があるため,多くの従業員が休日返上でシステム修正や顧客折衝対策に忙殺されているなど,「休日を増やすために休日出勤する」という意味不明な現象があちらこちらで出現している。
まずは2月6日の「海苔の日」を国民全員で無事祝えるかどうか,注目が集まっている。