ルポ・気象庁24時−監視に命をかけるプロフェッショナル


この記事は,将来起こるかもしれない事件を妄想を交えて記したもので,少なくとも現時点においては全く事実ではありません。実在の人物・団体・事件等にも一切関係ありませんのでご注意ください。

東京・大手町。深夜まで灯が消えないビルが多いオフィス街の中でも,ここ気象庁には24時間365日,常に職員が残る「不夜城」的な組織が2つある。ひとつは言うまでもなく地震火山部地震津波監視課だ。いつ,どこで起こるか分からない地震等に備えて一時も気を緩めることのできない監視が続けられている。
そしてもうひとつは,意外と知られていないが観測部計画課。春先になると注目を浴びる「桜の開花情報」を担当している部署だ。毎年2月から4月頃にかけて世間の関心を集め,その後はすっかり忘れ去られてしまう開花情報だが,実は大変な努力のもとに収集されている。
深夜1時30分。庁舎から約680名の男達が無言で出てきて,自転車などでそれぞれの任地に向かう。そして約1時間後,先ほどの男達とは違う約680名が庁舎内にこれも無言で入っていく。彼らこそ,全国各地の桜の開花状況を6時間交替の24時間体制で見守る監視員達だ。気象庁が公式な観測地点としているのは各都道府県の主要都市ごとに1箇所ずつだが,「個体異常などで狂い咲きすることもあり得るため,他の地点の観測も必要」として,非公式な観測地点を多数確保し,これらも常時観測しているものだ。東京都内だけで680箇所,全国では24,500箇所におよぶこの非公式観測地点は,著名な桜の名所からオフィス街の桜,住宅地の民家に植えられている桜まで広範にわたっている。そしてこのそれぞれの観測地点に計4名の監視員が交替で張り付いており,監視員の総数は約10万名という膨大な数に上っている。彼らは国家公務員ではなくアルバイトという位置付けのため国家公務員の定数にはカウントされていないが,「我々の日々の監視により正確な開花情報が送り出されている」ことに誇りを感じて日々の業務に精進しているという。
「桜は春の花。何も,365日監視する必要はないのでは」という記者の質問に対して,練馬区某所の桜を担当する監視員のAさん(32)は「それは素人の考え方。桜は夏も秋も冬も変化している。その変化の状況を逐一掴んでおかないと正確な開花情報は出せない。それに突然秋に咲く可能性だって完全には否定できない。もしも桜が秋に咲いて気象庁が何の情報も出さないと「怠慢だ」と叩くのはあなた方マスコミでしょう」と反論する。
そんなAさんが「最も苦労する」というのは秋から冬にかけての監視。春の監視業務は,道行く人から見れば「開花を待ちわびる風流な人」に見えるが,秋の夜更けに桜の木を眺めるのは「枯れ木を長時間眺める変質者」扱いされるからだという。現に,民家の桜を担当する監視員で過去1年間に軽犯罪法,ストーカー禁止条例などで逮捕された事例が全国で500件を下らないという。こうした悲しい事態を防ぐため,昨年からは周辺の風景に溶け込むための変装も監視員に義務付けられており,迷彩色の作業着を着て民家の生垣の中に潜んで監視を続ける者,コンクリートブロック塀を密かに削り,人間1名がはまり込むことの出来る窪みを作って,灰色の衣装を着て監視を続ける者など,大変な思いをしながらも日々の監視業務は続けられている。
そんなAさんら監視員が将来の夢として必ず口にするのが「桜前線担当官」だ。桜前線とは,開花予想日が同じ日である地点を結んで出来たラインで,気温の上昇とともに北上していくおなじみの前線だが,Aさんによれば「桜前線の所在地を示すために直径3cmの白い,太いロープを実際に持って移動する」桜前線担当官が憧れの職業だという。この担当官は合計で8,000名おり,全長50kmから最大で600kmにもおよぶ桜前線の移動に合わせて,8,000名がかりでロープを持って歩いたり,気温の上昇が著しいときには全力で走ったりしながら北上していく。都会のど真ん中から野生動物が出没する山奥まで激しい環境の変化に耐えながら,しかし絶対にロープを手放さないというプライドは,Aさんら監視員の憧れの対象だ。
監視員や桜前線担当官らの人件費がどうやって捻出されているかは謎のままだが,正確な桜開花情報収集のために,今日も深夜の監視員交替は続く。