教育制度,抜本改革へ−定年延長対策の影響で

注意:この記事は,将来起こるかもしれない事件を妄想を交えて記したもので,少なくとも現時点においては全く事実ではありません。実在の人物・団体・事件等にも一切関係ありませんのでご注意ください。


高年齢者雇用安定法の改正がこの4月1日から施行されることに伴い,全ての事業主は定年の引上げ等の対応を迫られるが,厚生労働省ではこの対応を円滑に実現させるため,文部科学省と共同で抜本的対策として「教育制度の全面見直し」を実現させることとなった。
改正法が施行されると,事業主は(1)定年の引上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年の定めの廃止 のいずれかの措置を実施する必要が生じる。しかし各企業にとっては悩ましい問題も多い。特に難しいのが,社員の年齢構成に大きな幅が出てくること。幅広い年齢層の社員を擁することは,工夫次第で企業の活力増につながるが,マネジメントは格段に難しくなるのも事実。社員食堂のメニュー構成,標準的な文書の文字サイズ,緊急時用携帯電話の機種選定等々,年齢により嗜好や判断の分かれるテーマは山のようにある。この問題を解決しない限り,法改正の趣旨が実効性をもって広がることはない,と判断した厚生労働省が,文部科学省に働きかけたもの。
その内容は,定年を原則として80歳まで一律引上げさせると同時に,現在の教育制度「6(小学校)・3(中学校)・3(高校)・4(大学)」を,「12・8・8・10」に変更し,平均就労年齢を大幅に引上げるというもの。この案が実現した場合,18歳まで小学校に通い,26歳で中学校を卒業し,高校へ進学する場合は最短34歳で卒業,さらに大学まで進むと最短でも44歳でようやく卒業,社会人ということになる。
これにより社員の年齢幅を一定程度に抑える効果が期待できるが,「そんなに長期間何を勉強するのか」と疑問を呈する声も出ている。こうした批判に対して,文部科学省では「基礎的な教育やしつけが十分に出来ていないため,中学校卒業までは集中的に読み・書き・計算と礼儀作法だけを徹底的に教育する等,日本の国力を引上げる観点から抜本的に教育プログラムを改革する」としている。
標準的な就職年齢が34歳や44歳になることについて,「いい大人をいつまでぶらぶらさせるのか」と批判する意見もあるが,思わぬ効果があるのも事実。例えば,「ニート」と呼ばれている若年層が新たな教育制度のものでは普通の「学生」となるため,定義上「ニート問題」が消滅するという効果も生み出す。また,相撲界も今回の案を大歓迎している。日本人力士の場合,中学卒業時にスカウトされて入門するというのが一般的なルートになっているが,実際には大部分の力士が関取になれないまま角界を去っていくというのが現状。そのため,各部屋の親方には重要な仕事として「廃業力士の就職あっせん」があるが,相撲一筋で来た若者の能力を十分に生かせる職場はそんなにはないのも事実だ。しかし,新たな制度になれば,義務教育である小学校・中学校に通いながら関取を目指し,夢破れれば高校に入るという「人生やり直し」の幅が大きく広がることになる。また,若手起業家などにとっても,「失敗すれば普通の会社に入ってサラリーマンをやればいい」という選択肢ができることになるため,若者の挑戦心を刺激する制度として,小泉首相も高く評価しているという。
一方で深刻なのは現在20代前半の若手社員たち。今回の制度が即実行に移された場合,現在の大学4年生は新制度における中学4年生に編入される。中学校までは引き続き義務教育であるため,授業を受けるのに支障が出るような就職をするのは無理。このため,向こう10年から20年間程度は新入社員がほとんど入ってこない事態が想定され,「いつまでも新人」という事態が懸念されている。
また,来年就職する気満々だった現在の高校3年生,大学4年生も心境は複雑だ。まだまだ学生を続けられるという気楽さもある一方で,「30歳や40歳を過ぎて入社しても,やっぱり花見の場所取りや宴会での新人芸をやらされるのだろうか」「44歳で若手と呼ばれるのはちょっと・・・」と悩む。また,採用する企業にとっても,下手すると「新入社員の半数以上が何らかの成人病を抱えている」という事態も想定されるため,社員の健康管理には一層の留意が必要になる。
今回の制度を導入することにより,30年後の日本企業の社員平均年齢は62歳,課長職の平均年齢は68歳,部長職の平均年齢は75歳という試算結果も出ている。78歳の老人が毎日深夜残業をする一方で,25歳の若者が毎日「百ます計算」や「あいさつの仕方」を学んでいるという未来の社会が果たして現在よりもいいのかどうか,現時点での評価は難しそうだ。