金融機関で「象」活用がブームに−様々な場面で大活躍,象需給ひっ迫続く

注意:この記事は,将来起こるかもしれない事件を妄想を交えて記したもので,少なくとも現時点においては全く事実ではありません。実在の人物・団体・事件等にも一切関係ありませんのでご注意ください。


国内の金融機関が業務で「象」を活用する事例が急増している。
2005年度におけるインドゾウなどのアジアゾウ,およびアフリカゾウの輸入頭数は357頭と,前年度比で340頭もの急増となった。このうち,約9割が銀行系シンクタンクなどによる輸入となっている。ワシントン条約ではインドゾウ,アフリカゾウともに条約付属書のカテゴリーⅠに該当しており,商業目的での輸出入は禁止されているが,調査研究目的であれば輸出入両国の承認を条件として例外的に認められる仕組みとなっている。2005年度の大量輸入はその枠組みを利用したもので,ほとんどのシンクタンクでは調査研究の内容を「インドゾウ,アフリカゾウの銀行業務における活用可能性の調査研究」としている。これらの象はいずれも「金融機関経営の現場での実証研究」目的で金融機関に貸与され,様々な形で業務上の活用が広がっている。

東京・千代田区のA銀行本店。広いロビーには,ゆったりと歩くインドゾウ3頭の姿が見える。「象の眼は善悪を見通す」というタイの諺どおり,象という動物は邪心を持つ者には怖い存在に見え,正直な人間にとっては愛らしい動物に見えるという特性がある。この特性を生かして,偽造・盗難キャッシュカードで現金を引き出そうとする犯罪者を寄せ付けない効果を発揮している。既に偽造カードを使用しようとした男を踏み潰すなどの実績を挙げており,全国のカード犯罪団に衝撃を与えている。こうした犯罪抑止効果に同行では満足しており,トイレのしつけが困難なため1日に10回程度ロビー清掃が必要になるという悩みはあるものの,今後他の営業店にも象の利用を広げていく方針だ。

また,社外取締役として登用,象の眼で案件の是非を見通すことに期待する例もある。B銀行では「トミー」(インドゾウ,オス,8歳)を昨年度から社外取締役に登用,毎回取締役会に出席させている。人間以外が取締役に登用されたのは,金融業界では1999年にアコムが「むじんくん」を登用して世界初の「無人取締役会」を実現して以来,6年ぶりの出来事。トミー取締役は,普段はおとなしく末席でりんごなどを食べているが,一度だけ,議案説明がなされた際に突如暴れ始め,会議室を完全に破壊して議事進行を不可能にしたことがあった。その案件は,某IT企業との業務提携実施に関するもので,結局決議できなかったため提携を見送ったところ,1ヵ月後に同企業で不祥事が発覚,結果として思わぬ損害を回避できたという。象特有の直感が的確な経営判断を導いた事例であるが,一方で暴れた際に他の取締役全員が巻き添えで負傷したという負の側面も発生している。「トミー取締役の暴力を警察に訴える」と怒りを隠さない取締役もいるが,大勢は「そんな大人気ないことは・・・」という反応。ただ,「命あっての物種」ということで,象の社外取締役就任の事例はそれほど広がりを見せていないようだ。

住宅ローン推進にも活躍している。住宅購入者にとって,最近の最大の関心事は金利上昇もさることながら,購入するマイホームの耐震強度だ。知り合いの建築士を同行させてチェックするのも一般的になっているが,結局専門家同士の話に終始し,購入者自身が「これなら安心」と実感を持てないのが難しいところだ。この点を解消するために支店に配属されたインドゾウを活用しているのがC銀行D支店。住宅ローンの相談に訪れた顧客の希望に応じて,購入検討物件にインドゾウを体当たりさせて建物の揺れ具合等をチェックする,というものだ。このサービスを開始して実際にインドゾウを体当たりさせたケースはまだ5例に過ぎず,うち2例では購入予定物件が全壊するという事態に陥り賠償問題を巡ってトラブルとなっているが,残り3例では成約に至るなど,着実に実績につながっている。ただ,同支店周辺の住宅街では,深夜に突然住宅が壊されるという事件が相次いでおり,被害者から同支店にリフォームローンの申込もこれに比例して急増している。この現象について,「同支店が象を夜中に解き放って壊させている,マッチポンプではないのか」との噂も広がっており,同支店では全面否定しているものの,地域住民が深夜の自主パトロールを始めている。

地道な営業活動でも象の活躍は目立っている。E信用金庫では,これまで主に自転車を使用していた営業担当者の巡回手段を象に切替えた。その効果はてきめんで,象が通りかかるだけで地域住民が集まってくるため,営業活動の効率も実績もうなぎのぼりになっているという。また,象が巡回している地域の犯罪発生件数が大きく減少しているという報告もあり,「思わぬ副産物」(同金庫)ながら,地域から非常に感謝されているという。こうじた実例を見た他の信用金庫も象の導入に前向きになっており,ますます象の需給が逼迫気味になっている。

そうした状況の中,象の繁殖が重要な課題となっている。今後の銀行業務における象の活用可能性は無限に広がっているものの,肝心の象の輸入はワシントン条約で原則禁止されている。これ以上の頭数を調査研究目的で輸入するのは不可能であり,残された手は国内での繁殖。これに早速手を付けたのがF銀行。同行では,他行への象の販売ビジネスも視野に入れつつ,象の繁殖用地として千葉県にあるテーマパーク「東京ドイツ村」を買収,適齢期のインドゾウなど40頭を移送した。初代「象繁殖推進部長(取締役兼務)」には,同行執行役員営業推進部長の木本辰雄氏(47)が就任。また,ゾウの世話には特殊な技能が必要となることから,同行では人事制度を改定,新たに「キャリアE」(Elephant)を創設。営業店で「象使い」として抜群の実績を挙げた行員ら30名が新キャリアに移行した。彼らはゾウ園勤務を基本としつつ,営業店での象活用およびトラブルサポートに当たる予定だ。木本部長は「初代部長に指名され非常に光栄だ。10年後には毎年100頭の象を輩出し,100年後には象だけで銀行業務が遂行されている状況が創れるよう,努力したい」と,かなり思い切った夢を語った。

そのほかにも,「株主総会で最前列に並べてはどうか」など,異なる活用方法を検討している銀行もある模様で,一体どこまで活用範囲が広がるのか,注目が集まっている。