新生丸ビル,苦難の船出−虚偽表示疑惑で苦境に(2002年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。また,登場する企業名・団体名・個人名は実在のものとは関係なく,かつ時代の変遷と共に変化・消滅しているケースもありますのでお気をつけください。


9月6日にグランドオープンを果たしたばかりの丸の内地区の新ランドマーク,新生・丸ビルが扇千景国土交通相の逆鱗に触れたことから苦境に立たされている。
発端は,ビル内にオープンした高級イタリア料理店の開業レセプション。賓客として招かれていた扇千景国土交通相が大臣車で丸ビルに到着,三菱地所の高木茂社長がこれを出迎えた。
扇大臣は不審そうな眼で丸ビルを見上げると,笑顔で近づいてきた高木社長に向かって一言。「このビル,どこが丸いのよ?丸くもないのに丸ビルだなんて虚偽表示じゃないの!」
思いがけない厳しい口調の大臣に高木社長は意外感を感じつつも,にこやかな表情で「いや大臣,丸ビルの『丸』は,『丸の内』の丸でして」と説明。ところが扇大臣は「あなた,そんな詭弁が通用すると思ってるの?」と激怒してこれを一蹴。
思いもよらぬ展開に青ざめる高木社長に向かって扇大臣は,「国民の信頼を回復するため,1ヶ月以内に丸ビルの名にふさわしいビルにしなさい。これは国土交通大臣としての命令です」と言い残すと,きびすを返して車に戻り去っていった。


めでたいはずのオープニングでいきなり大ピンチを迎えることになった三菱地所では,緊急対策チームを設置。「大臣の単なる勘違いだから礼を尽くして再度説明すれば済む話では」という意見がメンバーの大勢を占めたが,高木社長は「私もそう思うが相手が悪い。不本意だが別の対策を取らざるを得ない」と一言。これにより,緊急対策チームの本格検討が始動した。
最初に案に上ったのが,ビル本体を円柱形に増築すること。しかし床面積が大幅に増加することで容積率の上限を突破することが判明して断念された。
逆に四角いビルの角を削って楕円形の円柱ビルにすることも検討されたが,「これは丸じゃなくて楕円だ」という言いがかりをつけられる恐れがあるとして,これも断念。
次に有力案として登場したのが,直径30mの丸い巨大なアドバルーンをビル屋上から上げるというアイデア。ビル改築に比べればコストが大幅に安く済むことから一気に最有力候補になり,国土交通省に内々打診。丸ビル側に同情的な国土交通省の事務方は理解を示しつつも,このアドバルーンが今度は航空法違反となることが判明。「航空法も所管する国土交通省としては認めることは難しい」として断念するよう要請された。

このため今度は,同じく直径30mの巨大な球体オブジェをビル屋上に直接設置する案に切り替え,試作品を屋上に設置。風速12mの風で巨大な球体が屋上から転落,東京中央郵便局を直撃するといったハプニングもあったものの,本格設置の際には強度を高めることで国土交通省の事務方もこれを容認する意向が示され,ようやく決着かと思われたが,扇大臣はこの案に対して「それじゃ『丸ビル』じゃなくて『玉ビル』じゃないの」と再び一蹴。
さすがに国土交通省事務次官以下も大臣をとりなしに入ったが,大臣は頑として「虚偽表示は認めません」の一点張りで譲らず,結局この案もお蔵入りとなりそうな模様だ。
現在,三菱地所では最後の一手として,丸ビルの所有権を破格の100億円でプロゴルファーの丸山茂樹氏に譲渡して,所有者の名称も絡めて「丸ビル」の名を正当化する方向で調整に動いているが,丸山氏が100億円という価格に難色を示しているという。

ぎりぎりまで追い詰められている三菱地所をよそ目に,当の丸ビルは連日予想を上回る10万人以上の集客を達成する絶好調ぶり。
丸ビルとしての生き残りに成功するか,屈辱の「角ビル」への名称変更に踏み切るか,三菱地所の決断が注目される。