談合決別宣言に代わり「金属決別宣言」がブームに


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談合事件の再発覚から一昨年の「談合決別宣言」が改めて注目を集めているが,最近これとは全く関係なく,「金属決別宣言」を行う企業が増加している。この「宣言」の意義と影響を追ってみた。

「発端は近年の金属盗難事件の多発でした」と語るのは,ゼネコン大手・大林組の幹部。最近,ケーブルや電線,公衆トイレ等の屋根の金属板,寺院の鐘,墓のステンレス製トレーに至るまで,様々な金属製品等の盗難事件が相次いでいる。中国における需要の急拡大などを背景に,素材価格が高騰していることが原因であるとの見方が専らだ。
当初は一時的な現象にとどまるとも見られていたが,盗難件数は増加する一方。最近ではオフィスビルの入り口に設置されている入居企業名等を記した案内板が持ち去られる例や,アサヒビール本社隣の金色の巨大オブジェの盗難未遂事件が発生するなど,犯罪のバリエーションも拡大する一方となっており,各企業では何らかの対策を迫られる状況となりつつあった。
そんななか,大林組が発表した「金属決別宣言」は,「当社は今後,業務において一切金属を使用しません」というもの。
金属製品を多用している大型ビル建設現場は,金属窃盗犯にとっては大きな獲物があふれる「宝の山」。万一監督の目を潜り抜けて金属製の重要な構造物が盗まれてしまい,それに気付かぬままビル建設が進むと,「安全性の面で重大な問題が生じる可能性がある」(大林組幹部)という。こうしたリスクを排除するには,「ビル建設に一切金属を使わなければいい」という大胆な発想が,今回の「金属決別宣言」を生んだ。
同社では現在受注している全ての物件について,「オール木造建築」で対応する方針を固めて受注者側と折衝を開始,既に8割近い受注者から同意を取り付けているという。
今夏に同社が晴海で着工予定の30階建て高層マンションも「釘一本すら使わない完全木造建築で対応する」といい,同社では現在ノウハウ豊富な宮大工の採用を急ピッチで進めている。十分な人員が揃えば「六本木ヒルズ級の木造建築にもチャレンジしたい」(同社幹部)と意欲を見せる。
ビルの躯体のみならず,内部の什器等も含めて「完全メタルレス」環境を実現させるため,同社では様々な企業と共同でメタルレス製品の開発に取り組んでいる。
NTT東日本と組んで研究中の「ビジネスユーズに耐えられる品質の糸電話」,コクヨと開発する「強化ダンボール製キャビネット・デスク・チェア」,NECと共同開発する「100%木製パソコン」など,プロジェクトチームは総数で78にものぼる。どのチームが最初に成果をあげるか,経営陣からの熱い視線が集まっている。


こうした「金属決別宣言」は,金属需要の減少を想起させ,素材価格の高騰を抑える効果を果たしているほか,資源保護という観点で企業イメージの向上にも繋がることから,ゼネコンのみならず他の業態にも追随の動きが広がっている。


三菱東京UFJ銀行では,「段階的に進めていく」としながらも,「3年後を目途に完全メタルレスのオフィス環境を実現させる」と発表,その第一弾として「行員食堂からのナイフ・フォーク・スプーンの追放」を打ち出した。
「小さな一歩だが,行員に経営方針を意識させるには身近なところから手をつけるのがいいと判断した」(同行首脳)というこの戦略は,既に3月2日からスタートしている。同行では今回の取組みとは別に,1年前から資源保護のために「割り箸廃止」を実施中であることから,食堂を利用する行員は全て「手づかみ」で食事を行うことに。「衛生上問題があるのではないか」との声もあったが,「手づかみで食べるため,念入りに手洗いをするようになり,かえって衛生的になった」と評価する声のほうが強いようだ。
手づかみで器用にマーボー豆腐を食べる行員,本場インドのマナーに則って上品に指を使ってカレーを食べる行員,果敢にも熱々のドリアやチャーシュー麺に手を突っ込む行員など,食堂内は「かつてないほど活気に満ち溢れている」(同行行員)と評判は上々だ。
「手づかみで食べるという行為が行員の野性の感覚を呼び覚ましたのか,全体的に仕事上の勘も冴え渡り,今後の業績への寄与も期待できる」(同行首脳)という思わぬ効果まで出てきている。
食べた後手を洗うのを忘れて「大事な書類をケチャップまみれにした」など,微笑ましい事件も散発しているが,同行では「この路線は間違いではない」と自信を深めており,「メタルレス」環境の実現に向けてさらに強力に歩を進めていくという。


現在のところ,新日本製鉄三菱マテリアル日立電線などの金属関連企業は「金属のない現代社会など考えられない」と静観,嵐が過ぎ去るのを待つ構えだ。この金属決別宣言の波がどこまで広がるかにより,我が国産業構造にも大きな変化が起こりそうだ。