パワーハラスメント撲滅DVDが人気−企業が競って購入

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。



最近,裁判等でも一段と注目度が高まっている,いわゆる「パワーハラスメント」。上司が部下に対して持つ権限を行使するなかで生じる問題だが,セクハラ同様,「どこまでが問題なのか」はケースバイケースで判断せざるを得ないため,「難しい問題」として扱われることが多い。

そんななか,「こうやればパワハラは100%回避できる」という具体的解決策を示したDVDが発売され,企業人の間では「ビリーズブートキャンプ」をしのぐ今年最大のヒット作になりそうな勢いだ。



DVDを企画・製作したのは,「マンダリンオリエンタル東京」「ペニンシュラ東京」など,都内の高級外資系ホテルに勤務するホテルマンら8名で組織する「若い根っこの会シニア」。

代表であるペニンシュラ東京の渡辺文明氏(33)は言う。「上司の役割は,部下が仕事をする最適な環境を整えて,最高のパフォーマンスを発揮させること。これは,お客様がビジネスや観光等,旅の目的を最高の形で達成できるよう,全面的にサポートする我々ホテルマンの日常の精神そのものです」



DVDは,某商社の課長である伊藤氏の一日を追う形で構成されている。


午前6時30分,誰よりも早く出社する伊藤氏。オフィスに到着して最初に行うのは,部下の机上をピカピカに磨き上げること

「美しい環境に置かれると人はそれだけでテンションが上がるもの。仕事の立ち上がりもそれだけ早くなります」と渡辺氏のナレーションが解説する。


8時を過ぎると,徐々に部下が出社し始める。

エレベーターホールまで部下を出迎えに行く伊藤氏。「おはようございます」と部下ににこやかに語りかけると同時に,部下の顔色,スーツのシワの有無,髪型等をすばやくチェックし,現時点での部下のコンディションを判断すると,急いで給湯室に向かい,その部下に最適の飲み物を提供する。

この日,最初に来た部下を見てわずかに昨晩の酒が残っている,と判断した伊藤氏は,頭をすっきりさせるキリマンジャロをセレクト。部下から「課長のコーヒーはいつも美味しいですね」とお礼を言われた伊藤氏は「こういう一言が嬉しいですね」とカメラ目線で笑みをこぼす。


午前9時に部下が全員揃うと,伊藤氏は今日の仕事の候補を部下に示す。「頭ごなしに『これをやれ』というのではなく,複数の選択肢から最もやりたい仕事を選んでもらい,残った仕事は私が引き受ける。これが部下に気持ちよく仕事してもらう秘訣です」と伊藤氏はあくまで低姿勢に徹する。


午前10時。そろそろ仕事に疲れ始めた部下が首を回し始めると,伊藤氏はすかさず携帯で指圧師を呼び寄せて部下の首・肩のマッサージを始めさせる。

「下手に肩を揉むとかえって凝ったり,セクハラということになりかねない。こういうことはプロに任せるのが安心」という。一人10分程度のマッサージで部下の仕事の能率は再び大きく向上する。


お昼時になると,伊藤氏は部下の誰よりも早く,12階の社員食堂にダッシュする。そう,混雑する社員食堂で,部下達が気持ちよく昼食が出来るよう,場所取りに向かうのだ。

10分ほどして部下達がランチトレーを持って姿を見せると,伊藤氏はにこやかに大きく手を振って「こちらでーす!」と合図する。伊藤氏は部下が食事をとる間,そばに控えてお茶の給仕等をそつなくこなす


午後もこのような感じで部下のパフォーマンスを引き上げるために様々な工夫を施す。

しかし残念ながら,定時までに仕事が終わらないこともままある。このような場合は,もちろん部下に残業をお願いするが,伊藤氏はここで部下の家族に電話を入れる。「せっかくの家族団らんの時間を削ることになってしまい申し訳ない,という上司としての気持ちをご家族に直接伝えることで,部下が心置きなく残業できるよう環境を整えるのです」と伊藤氏は解説する。

残業を終えて帰る部下に,家族用の手土産を持たせるのは「上司のたしなみとして当然のこと」だという。



DVDの最後は,1日の仕事を終えた部下が帰り際に上司である伊藤氏に「今日も一日ありがとう」と,握手をしながら封筒を渡す場面で終わっている。

封筒の中身はもちろんチップ。渡辺氏は「相場は部下の給料の70%くらい。これだけサービスするのだから当然の対価です」という。



仕事とは何か。何のためにやるのか。思わずそんなことを深く考えてしまわずにはいられない,今年最大の問題作と言えよう。