「例え話」に脚光−労働時間短縮の切り札に


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交渉・説得などの場面における「例え話」の重要性に対する認識が高まりつつあり,ビジネスマンの必須能力として脚光を浴びている。



業務やビジネスの専門性が高まるにつれ,異なる部門や別組織の相手とのコミュニケーションがうまくいかない,と訴えるサラリーマンが急増している。

國學院大學の酒巻泰蔵教授の調査(2007年)によると,平均的なサラリーマンの1日当たりの実質労働時間は10時間22分であるが,そのうち,相手にこちらの考え方等を説明,理解を求めるのに費やしている時間は9時間47分と,実に労働時間全体の94%に達しているという。

このように多くのサラリーマンが説明等で苦しんでいる最大の理由は「基礎知識がない相手に,無理矢理専門的な内容を理解させようとするからだ」と酒巻教授は指摘しており,「直感的な理解を促す例え話を有効に活用することで,業務時間を従来の10分の1以下に抑えることも可能だ」と説明している。

こうした研究成果を踏まえ,「例え話の作成能力を向上させることで,業務効率の抜本的向上を図ろう」という各企業の取組みが始まっている。



3月16日に全国150会場で実施された第9回「比喩能力検定試験」(主催=財団法人・日本比喩能力検定協会)は,30代以上のサラリーマンを中心に全国で14万名もの受験者を集め,これまでの累計受験者数も30万名を突破した。

10級から最高8段までの全18レベルで実施されるこの試験は,丸紅・日産自動車・キャノンなど大手企業数十社で既に「受験必須」扱いをされており,まずは10級からチャレンジするサラリーマンの姿が目立つ。


10級では,次のような2択問題が50問出題され,70%以上の正解で合格となる。



次のうち,「メタボリック症候群の恐ろしさ」を表現するのにふさわしくない例え話はどちらか。

a 「山椒魚」(井伏鱒二
山椒魚 (新潮文庫)

b 「ドカベン」(水島新司
ドカベン (スーパースターズ編12) (少年チャンピオン・コミックス)


5級以上になると記述式の問題が入り,4級であれば「3歳の幼児にHD‐DVDとブルーレイディスクの違いを説明する50字以内の例え話を示せ」等10問が出題されている。

初段になると実技試験も加わり,「目の前に座っている愛国心の高いフランス人に,フランス料理よりも日本料理の方が旨いことを例え話だけで納得させよ(制限時間10分)」など,単なる例え話を超えた総合能力を要求される問題が出されている。

5段以上では,「カンガルーにヒラリーとオバマの違いを明確に理解させよ(制限時間10分)」など,対人コミュニケーションを超えた問題も出されているという。


現在のところ,「通常起こり得るあらゆるビジネスの場面にふさわしい例え話を即座に生み出せる」レベルとされる初段以上の有段者はまだ12名しか出ていないという。

これら有段者は協会から「黒タスキ」を授与されており,企業内で何か問題が起こると,黒タスキをかけた彼らが呼ばれることも増えつつあるという。


伊勢丹百貨店では「入社5年目までに3級取得」という厳しい目標を社員に課しているなど,ますますこの試験はサラリーマン必須のものとして定着しそうだ。




また,「例え話」を専門に作成する部署を設置する動きも盛んだ。


野村證券では,コンプライアンス本部に「例え話部」を新設,野村正行例え話部長(48)以下6名の体制で業務を開始させた。

この部に最初に下されたミッションは,同社で販売する商品の特徴・リスクを分かりやすく理解させるための例え話の作成。顧客に短時間で商品概要とリスクを理解させることで,金融商品取引法下における業務効率を劇的に改善させることを目的とした取組みだ。

現在同社で取り扱っている商品は投資信託,債券,個別株式など全25,000点にも及ぶことから,6名の部員らはほとんど不眠不休の状態で例え話作成に当たっている。

労働環境について問われた野村部長は,「例えて言うなら永遠に続く拷問のようなものですよ」と,分かりやすい例えで説明してくれた。



「例え話だけで1億円稼ぐサラリーマン」「不適切な例え話で株主代表訴訟」などが出てくるのも時間の問題と見られ,仕事とは何か,を改めて考える機会が増えそうだ。