超高齢社会到来を無理矢理「ストップ」−戸籍法改正実現へ

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。


超高齢社会到来への「抜本策」とも言える戸籍法改正が次期臨時国会で成立することがほぼ確実となり,世界中の注目を集めている。


少子化・高齢化に代表されるわが国の人口構成が抱える深刻な問題,なかでも,高齢者の激増とこれに伴う生産年齢人口の激減は今後の国家運営そのものの危機につながりかねない問題として認識されている。しかし,人口ピラミッド自体は既に確定しているものであり,いかんともしようがないのが事実だ。

そうした深刻な問題に対して,法務省官僚のAさん(31)がある閃きを得た。
Aさんに天啓をもたらしたのは,出勤前にテレビで見ていた芸能ニュース。あるタレントが年齢を「サバ読み」していたという芸能ニュースだったが,Aさんは「そうだ,国民が無理のない範囲で年齢をサバ読みして,戸籍を訂正してしまえば,人口ピラミッドは大きく変えられる」と直感。

早速,出勤して同僚にこのアイデアを話すと全員が「まさにコロンブスの卵の素晴らしい案だ」と絶賛。同省では直ちに18名からなるプロジェクトチームを立上げ,実務的に必要となる具体的課題の検討に入った。


最大の問題となったのが「サバ読みを認める範囲と条件」だ。
人口ピラミッドの構成を適正化するには,少しでも多くの国民に年齢のサバ読みをさせて戸籍の訂正を行うことが望ましい。
しかし,年齢相応にしか見えない75歳の男性に「17歳になる」ことを認めるのはさすがに無理があると判断。実年齢80歳で逝去しても戸籍上は22歳の若者が亡くなったことになり,平均寿命の大幅な低下を招くことになるほか,17歳のリアルな同級生達とのコミュニティに円滑に加われるかどうかも懸念されるためだ。

このため,プロジェクトチームではまず,年齢の修正を希望する国民に対して,体力テストと世代相応の知識テストを実施し,それぞれ合格点を得た場合にのみ,戸籍上の年齢の修正を認めるという基本的枠組みを決定。
体力テストについては既に文部科学省の統計データがあるため,プロジェクトチームでは年齢ごとの知識テスト問題を作成すべく,全国民から無作為に各年齢ごとに100名を抽出。「同年齢として絶対に知っておかないとおかしい情報」の提供を求め,これらの情報をもとに,下は5歳から上は75歳までの「世代知識テスト」が完成した。


法務省では3,700名の国民(30歳〜85歳)の参加を得て事前テストを実施。その結果は,国民平均で4.7歳の年齢サバ読みが可能というもので,参加者の5%は15歳を超える大幅なサバ読みをクリア。
トップの成績をあげた神奈川県在住の厚田武志さん(83)は,今も毎日10kmのジョギングを欠かさず,ゴルフではたびたび「エイジシュート」を達成する実力で,当然ながら体力テストでは驚異的な成績を確保。さらには,52歳の息子夫婦,25歳・21歳の孫,3歳のひ孫と同居していることも功を奏し,世代別知識テストでも抜群の成績をおさめ,何と実年齢より64歳下の「19歳」のサバ読みを認められるという結果をたたき出した。


法務省では,この結果を受け「国民が健康により留意すれば,平均で年齢を10歳以上引き下げることは可能」と判断,超高齢社会への有効な対策になるとして千葉大臣を伴って首相官邸にこのプランを持ち込んだ。
新しいものが好きな現政権はこの提案に即座に乗ることを決め,このプランを実現するうえで必要な戸籍法等の改正案を成立させるべく野党への根回しに着手。
これまでのところ,自民党共産党以外の各党からは前向きな回答を得ており,9月の臨時国会での成立はほぼ確実な情勢となっている。


企業もこうした動きを見逃していない。

最も先行しているのは全日空だ。
同社では,航空業界のトレンドとも言える使用機材のダウンサイジング(小型化)に伴い今後運行便数が増加,機長等の絶対数が不足することが問題となっていた。
これまでは定年引上げ等により当面の機長不足に対処してきたが,いくら健康でも「75歳の機長」が操縦するとなると乗客に不安を与えることから,「そろそろこの手も限界だ」と閉塞感が漂っていた。
そうした状況で登場した「年齢サバ読みの国家公認」はまさに渡りに舟。国土交通省および法務省に掛け合い,「社会実験」という位置付けで,特例的にパイロットに限り年齢サバ読みを一足先にスタートさせる許可を得た。


パイロットはもともと人並み外れて健康であるため,体力テストは楽々クリア。
世代知識テストも,社内若手社員らの協力を得て何とかクリアし,同社に所属する機長全員が「若返り」に成功。
うち3名には,航空法で定期運送用操縦士の資格保有が可能な21歳を下回る年齢認定が出たため,免許を剥奪されるというハプニングは生じたが,一気に機長の平均年齢を業界最低の27歳にまで引き下げるという快挙を達成し,機長問題を一気に解消させた。


そのほかの業種でも「年齢サバ読み」の活用が戸籍法改正に先駆けて始まっている。

東芝では,過去に景気低迷等の影響を受け,2003〜2005年の採用を大幅削減したため,社員構成に深刻なゆがみが生じていた。
この事態を解消すべく,社内公募制度で始めたのが「貴方も2003〜2005年入社組に入りませんか?」キャンペーンだ。
2002年以前に入社した社員で希望する者に,法務省の体力・世代知識テストを受けてもらい,「2003〜2005年入社社員としてやっていける」という判定を受けた者には,今後新たな入社年次に則した処遇を行っていくというものだ。

多くの場合,給与水準および役職自体は下がることが予想されるものの「定年が迫ってきたがもっと長く働きたい」「もう一度若い頃から社会人人生をやり直したい」という社員から応募が殺到。
法務省テスト・小論文・面接審査等を経て,全部で230名の新「2003・2004・2005年入社社員」が誕生した。

彼らの平均年齢は47.5歳と,元祖2003〜2005年入社組に比べて20歳近い年上。
8月29日には早速,それぞれの年次に分かれて「新同期歓迎会」が開催された。大幅に年上の同期を多数迎えることになった元祖入社組は「昨日まで直属上司だった人がいきなり同期になっても『タメ口』はきき辛い」などとかなり緊張した様子。

そんな歓迎会だったが,新・旧同期社員間の心理的障壁になったのが「加齢臭」。
歓迎会の翌日,新規加入組は「この加齢臭が消えない限り,本当の同期として溶け込めない」と対策を求めて人事部に直訴。
その結果,加齢臭を永久除去する美容整形手術費用(約60万円)を全額,会社で負担するという太っ腹な制度の新設が決まった。

東芝人事部では,「わが社の経験上,この加齢臭問題は国家的に年齢のサバ読みを推進していく上で最大の障害。こども手当も必要だが,加齢臭手当の支給も政府にぜひ実現してもらいたい」と訴えている。


この対策が本当に日本の根本的課題の解決につながるのか,やや疑問はあるところだが,帰趨を見守りたい。