ドキュメント・人材活用の限界に挑戦する日本企業

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。



日本企業は,様々な人事・人材面での課題に直面している。
そのなかでも大きなものが,社員構成の高齢化対応,そして多様な人材の活用で組織を活性化させるダイバーシティ(多様性)マネジメントだ。
今日は,様々な困難に直面しながらこの2つの課題に同時に取り組んでいる,ある中堅商社の奮戦ぶりを追った(文中敬称略)。



同社の食品流通部の三好孝敏(38)は,昨年10月に課長に昇格した「新米管理職」だ。
同社では,バブル崩壊後の採用を抑制したことも影響して,近年は部下が1人もいない「部下無し管理職」が激増しており,三好も当初,その1人だった。
そんな三好に今年4月,はじめての部下が配属された。ただ,「残念ながら人間ではなかったんです」(三好)。


部下としてオフィスに連れてこられたのは猿,犬,キジ,合計3匹の動物達だった。



「俺は桃太郎か!」と激怒した三好は,上司である部長に直談判したが,「本物の桃太郎は,文句も言わず彼らを受け入れ,そしてきちんと成果を挙げた。何もやらないうちから文句を言うな!」と一喝されただけだった。

そしてこの日から,真の管理職としての三好の苦闘が始まった。


猿(太郎),犬(二郎),キジ(三郎)とのコミュニケーションのとり方が,まずは大きな関門として立ちはだかった。
三好は動物関連の専門書を読み漁り,彼らの仕草が何を意味しているのかを必死で読み取ろうとした。たまに見るテレビも「天才!志村どうぶつ園」など,全て動物関連のものばかり。
そうした努力のかいあって,ゴールデンウイーク明けの5月中旬ごろには,部下たちの機嫌がいいのか悪いのか,何を求めているのかは概ね理解できるようになった。


だが本当に必要なのは,課長として彼らに仕事をさせることだ。
人間と動物の間の壁は厚く,太郎も二郎も三郎も,三好の指示を全く聞かずに,寝転んだり勝手にいなくなったりを繰り返すばかり。特に三郎は,勝手に飛んで行き,戻ってこない「無断早退」を繰り返し,このままでは人事上の処分も考えざるを得ないという状況に追い込まれる始末だった。


「何とか半人前程度の仕事が出来るように成長してもらいたい」と願う日々が続いたが,ある日の出来事で,三好は目から鱗が落ちる思いをした。
いつもはオフィス内で寝転んでばかりの二郎が,この日は不安げな鳴き声をあげながら給湯室から出たり入ったりしているのだ。
それから30分後,たまたま二郎の行動を不審に思った三好の同僚が給湯室を確認したところ,ガス漏れが始まっていることに気づき,慌ててガス栓を止めることで事なきを得た。
そう,二郎は犬としての鋭い嗅覚で,ごくわずかなガス漏れを嗅ぎ分け,周囲に異変を知らせようとしていたのだ。


二郎のお手柄に,「やるべき仕事を決め付けて与えるのではなく,それぞれの持ち味を生かせるように仕事を組み立ててやればいい」という,当たり前の事実に気づいた三好。


それからは,3匹の部下をうまく使いこなし,見違えるような業務成果をあげ始めた。


人間の身体から発せられる臭いは,心理状態の変化で微妙に変化することが知られている。二郎は三好とともに取引先との面談に出席し,相手の臭いをかぎ分けて吠えることで三好に知らせ,三好はその情報をもとに交渉を有利にコントロールする。
三郎は会議室内を飛びまわって相手の集中力を乱し,交渉をさらに有利なものにする。
太郎は残念ながら,「相手にお詫びする必要がある際に反省ポーズを見せるくらいしか芸が無い」(三好)ためあまり役に立っていないが,「まあ気長に育てますよ」と余裕を見せる。


営業成績を伸ばした三好には,この9月から新しい部下が加わった。
何となく人間に似ているが,明らかに宇宙人にしか見えない新たな部下・四郎に,三好はもはや動じない。
「犬やキジに比べれば楽勝です」と余裕を見せる三好は,この日開催された社内会議に四郎を伴って出席。四郎はその特殊能力を発揮し,出席者に会議資料を念力で配布し,会議運営の効率化にさっそく貢献していた。


同社では,「哺乳類,鳥類までは使いこなせる目処がついたが,爬虫類や両生類はまだ時期尚早」と,現時点ではこのダイバーシティ推進に限界があることを認めつつも,「ゆくゆくは節足動物,最終的には細菌なども部下に出来るよう研究を進めたい」としている。
また,こうした動物らも,業績次第では管理職や役員に昇進させる道を開く予定だという。


近い将来,犬やイノシシが上司として我々の前に姿を見せる日も,遠くはなさそうだ。