新社会人を襲う数々の試練


注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。



今年もまた,新社会人がデビューする季節がやってきた。
新入社員が取り組むことになる研修や仕事については,各企業が様々な工夫を凝らしてきているが,今年は例年にない大胆なチャレンジが目立っている。
そんな各企業の試行錯誤の最前線を追った。



4月にNECに入社する相川翼さん(24)の自宅に,1通の郵便が届いたのは3月初め。4月からの配属部署を連絡する文書だったが,相川さんはその内容に思わず目を疑った。
「相川 翼殿 代表取締役社長を命じる」
最近,「○人抜きで社長就任」等,思い切った抜擢人事のニュースが続いているとはいえ,グループ従業員が10万名を超える超大企業で,新入社員をいきなり経営トップに据えるのは歴史的に見ても例がない。
同社は,この思い切った抜擢の狙いをこう語る。
「社会人としてのマナーすら習得していない新入社員をトップに据えると,それを支えるすべての社員が『自分がしっかりしないといけない』と心から考えるようになるのではないか,と思いまして。まあ,思いつきですけど(笑)」
かなり軽いノリで決めた人事らしく,相川さんが選ばれたのも「新入社員名簿(50音順)の最初だったから」という理由だという。
他の新入社員と一緒に「名刺交換のマナー」などを含む2週間の入社研修を受けたのち,相川さんを差し当たり待ち受ける重要課題は,社長を支える社長室の歓迎会で披露する新人芸の練習と,6月の株主総会を議長として乗り切ることの2つ。
「試練を経てたくましく育ってほしい。まあダメならすぐに代えますけど(笑)」と,同社のノリはどこまでも軽やかだ。




昨年10月。ある総合商社の内定式に出席した佐藤美咲さん(22)は驚愕を禁じ得なかった。同期入社120名のうち,女性33名全員が何と同姓同名の「佐藤美咲」だったのだ。ちなみに男性の同期は全員が「田中健太」だった。
同社人事部は,その狙いを次のように語っている。
「商社にとって最も重要な財産は,社員一人ひとりの際立つ個性と能力。同期全員が同姓同名であれば,一人一人が埋没しないよう,自分の個性を発揮するのに必死になると考え,敢えて同姓同名さんばかりに内定を出しました」
今回話を聞いた佐藤美咲さんは,33名の同姓同名の中で個性を競い合う研修を経た結果,今では「アルデンテ」というニックネームが定着しているという。
その名前の由来について尋ねると,はにかんで決して明らかにはしてくれなかったが,「ニョクマム」「釜めし」「巌流島」など,個性豊かなニックネームを持った同期社員らと楽しそうに談笑する姿が印象的だった。




三菱重工に入社した高山拓也さん(24)は,念願だった宇宙事業部に配属,舞い上がるような気分で初出社の日を迎えた。
1日朝,職場で宇宙事業部長の出迎えを受けた高山さんは,部長の言葉に耳を疑った。
「君と私が会うのはおそらく今日が最初で最後だが,健闘を祈る」
高山さんは,宇宙事業部が新たに取り組む「有人宇宙飛行事業」の飛行士要員に抜擢されたのだ。
同社が当初参入を目指したのは,火星への有人宇宙飛行事業。しかし国内外のライバル各社との競争が厳しいため断念,代わりに狙いを定めたのが,土星の衛星・タイタンへの有人飛行だ。
往復で3〜4年程度とされる火星への飛行と比べ,土星への飛行は少なくとも往復で60年はかかるという大事業。宇宙事業部で最年少の高山さんでなければ,生きて戻れる可能性がないため,ほぼ自動的に白羽の矢が立った格好だ。

「一刻も早く出発しないと,生きているうちに戻れなくなる」と,高山さんは当日夜の歓迎会兼送別会を終えると,翌朝直ちにJAXAのつくば宇宙センターに護送された。
ここで約2週間の新社会人としての研修と,宇宙飛行士としての導入研修を経て,米国NASAでの本格訓練を約半年間実施,順調に行けば年内には土星に向けて打ち出される予定だという。
同社宇宙事業部では,高山さんの土星での具体的なミッションについては,「到着するのが30年も先のことなので,まだ決めていない。今後ゆっくり考える」として,5年後くらいを目途に,土星へ飛行中の高山さんに何らかの方法で伝達されることになる予定だという。
また,土星からの帰還途中で高山さんが同社の定年に達することについても,「40年も先の人事制度のことを今から考えても仕方ない」としている。
60年間にわたり狭い宇宙船に住み続け,毎日3食全てを会社支給の宇宙食で過ごすことになる高山さんに支払われる給与・賞与からは,「住宅貸与料」「給食費」が天引きされるため,手取りは1年目では5万円を切る見込だ。しかし天引き以外では金を遣うことが物理的に無理な高山さんの「60年間出金されない給与振込口座は極めて魅力的」として,多くの金融機関が高山さんの給与振込口座獲得を狙ってしのぎを削っているという。
なお,高山さんをタイタンまで運ぶことになる肝心の宇宙船については「これから頑張って設計,製造する」(同部)という段階。
堅実を旨とする同社の社風は,明らかに変わりつつあるようだ。



彼ら3名を含む,全ての新入社員たちの今後の活躍を祈りたい。