スタジオジブリが初のヤクザ映画を製作―今夏公開予定(2002年)

注:このコーナーは,1998〜2004年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。


昨年,「千と千尋の神隠し」で日本映画界の動員記録を大幅に塗り替えたスタジオ・ジブリが,宮崎駿監督の「永年の夢」であったヤクザ映画を製作・配給することを20日発表した。
作品のタイトルは「<実録>やくざ対フーリガン・札幌死闘編」(仮題)で,日韓共同開催のワールドカップ開会が迫り,世界中から押し寄せてくるフーリガンへの不安が高まりつつある社会情勢にも着目した意欲作だ。

この作品は東映が1993年にVシネマで発売した作品「実録!やくざ対フーリガン・死闘PK合戦」をリメイクしたもの。1993年は日本が初のワールドカップ出場に限りなく近付き,そして「ドーハの悲劇」で挫折した年。サッカー熱の高まりを捉え,得意のやくざ路線と合体させるべく「網走番外地」シリーズなどで知られる石井輝男監督を起用した東映だったが,販売・レンタルとも見事に大コケ。
しかし,当時たまたまこの作品をレンタルで鑑賞した宮崎駿監督は「粗削りだが,バイオレンスとファンタジーのバランスが抜群だ」と高く評価,「いつか自分の手でリメイクしたい」という希望を今回実現させたもの。

「ヤクザ映画をアニメで製作する」という宮崎監督の構想にはジブリ内でも反対意見が強く,結局スタッフの意見も大幅に取り入れ,「スタジオジブリらしい,ヤクザ映画」(スタッフ)に仕上がったという。ただ,声優陣には宮崎監督の極めて強い希望から,菅原文太岩下志麻石橋凌的場浩司ら,新旧ヤクザ映画の主役クラスを揃えた豪華なラインナップが実現した。

ストーリーは2004年の日本が舞台。2002年のワールドカップで日本に大挙押し寄せたフーリガン達は,イングランド対アルゼンチンという因縁の一戦が行われた札幌を中心に暴虐の限りを尽くし,ワールドカップが終了した後もそのまま日本に不法滞在を続けた。北海道一円からは善良な日本人達がフーリガンによる被害を恐れて本州に移住する動きが強まり,2004年になるともはや北海道はフーリガンに完全に制圧された無法地帯となっていた。
そんなフーリガン津軽海峡をわたって本州進出を図ろうとしたことが,東日本最大の広域暴力団「のびのび会」会長の沢田(声・菅原文太)の逆鱗に触れる。
「いつまであんな奴等をのさばらせるんだ!叩き出せ!」
沢田の指令を受け,若頭として将来を嘱望された高橋(石橋凌)が北海道進撃隊2万人を率いて出発しようとしたが,その矢先,高橋は対立する「関東ウキウキ一家」の放ったヒットマン川岸(的場浩司)の凶弾に倒れる。
高橋に代わり沢田が指揮を命じたのは,沢田会長の孫娘で中学1年生の沢田愛子(岩下志麻)。はじめはとまどった愛子も,沢田家直系の血に導かれるように全国の「のびのび会」支配下の組員総勢2万人を整然と率いて北海道に向った。
20隻のフェリーに分乗して苫小牧に上陸しようとするのびのび会軍団を,フーリガン自衛隊から強奪した迫撃砲が襲う。
血を血で洗う闘いの果てに,廃虚と化した厳冬の札幌にたどり着いたのびのび会を待ち受けていたのは果たして・・・?

愛子を乗せたさっぽろ雪祭りの大雪像がゆっくりと空に昇っていく様子を,やくざとフーリガン達が涙を流しながら見上げるというラストシーンを試写で見た映画評論家の水野晴郎さんは,「ヤクザ映画でこんなに泣いたのは初めてだ。スタジオジブリにはぜひ次回策として,私のライフワークである『シベリア超特急』の第4作を手がけて欲しい」と絶賛。
宮崎監督は「千と千尋でいやというほど稼いだので,興行収入はゼロでもかまわない。私のやりたい仕事をやったというだけのことだ」とコメント。

スタジオジブリ初のR指定となるこの作品の公開は6月上旬が予定されており,今から観客の反応が楽しみだ。