「小泉・森会談」から思わぬ新事実発覚−官邸内に大量の缶ビール貯蔵(2005年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。今回は,任期満了まで残り少なくなった小泉内閣のエピソードを振り返る趣旨でお送りいたします。


8月6日夕刻に,郵政解散を思いとどまらせるべく森前首相小泉首相と会い,結局決裂した会談(いわゆる「缶ビール会談」)で,小泉首相森前首相にふるまった外国産缶ビール10本が話題になったが,その後の調べで新事実が発覚した。
最近,官邸を訪れた訪問者が例外なく口にするのが,「首相から海外のビールをご馳走になった」ということ。森前首相は10本だったが,盟友である山崎拓氏の場合は「結局朝まで話が尽きず,二人でビール320本を空けた」(山崎派幹部)など,個人差はあるもののいずれもかなりの量を飲んでいる。
そんな中,22日に官邸を表敬訪問した「山形さくらんぼ娘」一行にすっかり相好を崩した小泉首相が,いつもの調子で「シンハービール」を1人3本ずつ手渡し,「さくらんぼをつまみにさあ,飲みましょう」と誘った。さすがに断れないさくらんぼ娘の皆さんは戸惑いながらも缶ビールを飲み始めたが,その中の一人,松下あかりさん(23)が,「官邸にはいつも缶ビールの在庫があるんですか」と質問。これに対して,首相は「凄い量だよ。タイのシンハービールばかりだが800万本もある。全く飲みきれないよ」と説明。「800本」の誤りではないかと,当日の官房長官会見で記者団が質問したところ,細田官房長官が苦渋の表情で事実であることを認めたもの。
長官は詳細を明らかにしなかったが,関係筋の話を総合すると,大量のシンハービールが官邸に納入されたのは7月下旬だという。合意に向けた最終調整が難航していたタイとのFTA交渉は,ようやく8月1日に大筋で合意に達したが,その最終交渉の詰めの段階で駆引きの材料となったのがタイ産品のスポット輸入だったという。
「合意を記念して,お土産代わりにぜひタイ産品を購入してもらいたい」というタイ政府側の申入れに対し,当初「一方的にこのような条件を付けるのは不合理だ」と相手にしなかった日本側だが,早期合意に向けた首相からの強い指示を受け,やむなく単価の安いタイ産ビールの購入で妥協すべく折衝入りした。当初「シンハービール1億本」を要求していたタイに対し,「そんな量では賞味期限までに飲みきれない」と徹底抗戦,結局「実質賞味期限の半年間で首相官邸内で消費できるギリギリの量」(官邸関係者)として,800万本という数量で決着したもの。
1日当たり約45,000本ものシンハービールを消費するため,官邸では来客,閣議などあらゆる機会にシンハービールを提供している。18人の閣僚で合計585本のビールを空けた23日の閣議では,酔った谷垣財務大臣安来節を披露,唄も含めた一部始終が閣議議事録に記載されるというほほえましいハプニングも発生した。
9月11日の衆院選に向けた公認作業を進める中でもシンハービールは大活躍。一般公募に応募した150名の候補者を集めた17日の選考会議では,ビール好きの武部幹事長が「ビールを何本飲めるかで公認を決める」と宣言,3時間かけて一人で526本を飲んだ候補者を公認することを決めたが,急性アルコール中毒で13人が救急車で運ばれるなどの被害も出た。「いわゆる『イッキ』の強要ではないか」との記者団の質問に対して,小泉首相は「痛ましい事態だが,これも改革のための痛みだと考えている」と眉間にしわを寄せて答えた。
海外の賓客を迎えての晩餐会でも飲み物は全てシンハービール。5日に開催されたカメルーン大統領の歓迎晩餐会では,ビールに合わせてメニューも変更,「枝豆」「焼き餃子」「手作りソーセージ」「関西風お好み焼き」「フライドポテト」などが続々と登場,大統領もやや当惑気味だったという。
こうした事態に対して,日本の第1号FTAの締結先となったシンガポールは不満を表明,「公平性を確保する観点からわが国のタイガービールも2,000万本ほど買ってもらいたい。第1号の締結先なのだから数量が多いのは当然」(リー・シェンロン首相)と強気の要求を日本政府に突きつけている。
この海外からの動きについて,経済戦略会議の議長を務めるなど,歴代内閣と密接なつながりを持つ樋口廣太郎アサヒビール名誉会長は,「最初の一杯はわが国を代表する銘柄であるスーパードライで始めるのが筋ではないか」と不快感を表明,抗議の意味も込めつつ「お中元」として無料で5000万本を官邸に届けた。「缶ビール保管用に新館建設が必要になりそう」(首相秘書官)という首相官邸の苦悩は続きそうだ。