首都圏大停電で「人力」エネルギーに脚光−リスク分散の観点で取組み広がる

注意:この記事は,将来起こるかもしれない事件を妄想を交えて記したもので,少なくとも現時点においては全く事実ではありません。実在の人物・団体・事件等にも一切関係ありませんのでご注意ください。


8月14日の朝,突然首都圏を襲った大停電。幸いにして大きな被害もなく復旧したが,電力エネルギーに依存する大都市の脆さをはからずも露呈させる結果となった。この事件を契機として,非常時のためにエネルギー源を分散させる取組みが急速に広がりつつある。そうした取組みの中で今一番注目を集めているのが,最も原始的な手段である「人力」をエネルギー源として活用する試み。本日はそんな取組みの一部を紹介する。


8月19日早朝。東京・大手町の旧UFJ銀行ビルから,丸の内の三菱東京UFJ銀行本店までの道路に,10m間隔で同行の行員と見られるクールビズ姿の男性約150名が立つ。彼らは,同行が取り組む非常時プロジェクト「緊急時人力電話」のネットワーク要員だ。
停電,あるいはその他の大規模災害時に悩みとなるのが電話が不通となり,他拠点と連絡が取れなくなること。同行では,「電話回線を人間で代用してはどうか」という発想でプロジェクトをスタート,屋内での訓練を繰り返した後,この日が初の屋外での本格実験となった。
UFJ銀行ビル内で電話をかける役の行員が「もしもし」と語ると,一番近い場所に立っている行員が聞き取った「もしもし」という言葉を正確に次の行員に伝える。これを繰り返した後,150番目の行員は,三菱東京UFJ銀行本店で「プルプルプル」という電話の呼び出し音を大声で叫び上げる。電話を待つ役目の行員がプルプル叫んでいる行員にタッチすると,「もしもし」という言葉が無事伝えられる。以下,同じ手順で言葉が伝えられていくという,何とも原始的な仕組みだ。いわば「巨大な伝言ゲーム」とも言えるが,電話の生命は「正確さ」と「スピード」。聞き取った内容を正確かつ迅速に次の行員に伝える役割は,会話の内容が込み入れば込み入るほど困難になるが,同行行員は特訓を重ねた結果,150名による伝達所要時間を当初の15分から,なんと12秒にまで短縮したという。
「今後の課題は距離の延長とスピードのさらなる向上。東京−大阪間をマッハ2の速度で伝えるのが次の目標です」と語るのは同プロジェクトリーダーの安田浩介さん(37)だ。速度向上のためには行員間の距離を長くする必要があり,そのためには大声の出せる行員が必要,ということで,安田さんは来年度以降の行員採用について「大声技能枠」を設けるよう,人事部に直訴しているという。


電気が止まると全く機能しなくなるのは電車も同じ。JR東海では,9月から,各座席のフットレストを非常時にはペダルに付け替えることのできるタイプの新型車両を投入する予定で,現在最終試験を繰り返している。
20日深夜に小田原−新横浜間で実施された試験では,1500名の乗客役の社員が全力でペダルをこぎ,このエネルギーを車軸に伝えて回転させることで,最高時速147kmという大記録を達成した。しかし,エネルギー節約のため冷房も全く入らない車両で汗だくになった1500名は,すっかり疲れきった様子で偉業達成を喜ぶムードは微塵もない。
停電で動かなくなった新幹線でじっとしているのも辛いが,ペダルをこいで新幹線を動かすのもそれ以上に辛そうだ。


少々趣の異なる取組みを進めているのは大手町にあるA社。先日の停電で社員食堂が機能せず,お昼のメニューを準備できなかったという苦い経験から,逆に「調理しようという発想を捨てて,全部生で食べればいいじゃないか」という開き直りにしか見えない取組みを開始した。
食堂の責任者である斉藤一さんは語る。「何でも火を通せば安全,という過信・盲信が実は食中毒などを生んでいる。最初から完全な生で食べれば,食材が傷んでいないかどうか,食べる方も提供する方も非常に敏感になり,かえって安全になる。確認はしていないが,たぶん健康にもいいはず」「電気エネルギーの代りに人間の消化エネルギーを利用すると考えてもらいたい」
23日の昼食のメニューは「生ハラミ肉75g」「生米30g」「生にんにく1かけ」「生かぼちゃ4分の1個」だというA社の社員の今後が気にかかる。


その他,「人力エレベータ」「人力エスカレータ」「人力コピー機」などのプロジェクトが様々な企業で進行している中,日本航空では,高校野球智弁和歌山−帝京戦に触発されたのか,「人間あきらめなければ何でも実現できる」とし
て,「人力ジャンボジェット」計画に着手することを公表している。
「人力では無理だからこそ,文明が発展してきた」という出発点を忘れた,常軌を逸した取組みが今後も続きそうだ。