鉄道の相互乗入れが極端に拡大−タクシーと新幹線も相互乗入れ開始へ(2000年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。また,登場する企業名は実在のものとは関係なく,かつ時代の変遷と共に現存していないケースもありますのでお気をつけください。


従来,私鉄と私鉄の間など,近接する鉄道会社間に限られていた相互乗り入れが業種・形態を問わず激しい勢いで広がっている。沿線で宅地開発等の不動産事業を兼営する鉄道会社にとっては,相互乗り入れで利便性が向上することにより不動産価格へも好影響が及ぶことが期待できる他,これまで接点のなかった業種等との相互乗り入れで新たな顧客層の開拓が可能になるとの判断のもと,各社が積極戦略を進めているもので,毎日5組以上の新たな相互乗り入れが実現する等,業界はまさに一大ブームに沸きかえっている。

先鞭をつけたのは,独自の料金設定と顧客サービスで知られるKMタクシーと東北新幹線。東京から深夜に埼玉・栃木方面に帰る顧客はタクシーにとっては大変な上客であるが,料金がかさむだけに近年はこうした上客も数が少なくなり,タクシー間で奪い合いの構図が続いていた。
KMタクシーは逆転の発想で,「思い切り料金を引き下げることで顧客のパイを広げる」戦略に打って出ることとなり,料金引き下げの決め手として東北新幹線への乗り入れを決めたもの。例えば,新橋から埼玉県熊谷市まで乗車する場合には,従来のタクシーでは深夜料金で3万円前後かかっていたが,KMタクシーでは新橋から東京駅まで一般道路を走行した後,既に最終の新幹線が発車した後の東京駅新幹線ホームに専用エレベーターで乗り入れ,車輪を交換した後,一気にノンストップで東北新幹線熊谷駅まで時速230kmで駆け抜け,到着後再び車輪を交換した後一般道を走るという手法を開発した。所要時間はわずか40分,料金は東京−熊谷間は新幹線指定席料金が適用されるため,全部で5000円前後におさまる見込みだ。
同業タクシー各社は「死活問題だ」として,全面的に反対を行う見込みだが,既に顧客の圧倒的な支持を勝ち得たKMタクシーにとっては「自分たちの怠慢を棚に上げておいて努力する当社を非難するとは笑止千万」と余裕の構え。当面はKM→新幹線の一方的な乗り入れであるが,「将来的には逆乗り入れも検討したい」(KMタクシー幹部)としている。

営団丸の内線と静岡県大井川鉄道という遠距離乗り入れも来年早々に実現する。幼少のころから熱心なSLマニアであった帝都高速度交通営団の土坂総裁にとって,「地下鉄でSLを走らせる」というのは生涯をかけた夢。SL運行の実績のある大井川鉄道に早くから総裁自ら熱心に相互乗り入れのアプローチを続けていた。大井川鉄道側では営団の申し出に「趣旨が理解できない」と困惑,態度を保留していたが,最近の相互乗り入れブームを目の当たりにし,「首都圏のSLファンを呼び込む絶好の機会かもしれない」と受入れを決断したもの。受諾の回答を得た土坂総裁は狂喜乱舞,早速現在荻窪で折返し運転を行っている営団丸の内線を急遽静岡まで延長することを決定,来年1月の開通を目指して職員を総動員した突貫工事を開始している。
乗り入れ実現後は,赤坂見附から銀座までSLに乗車することも可能になる等,これまでの東京のイメージを一新することになりそうだ。ただ,問題はSLの排煙であり,当初営団では軌道に多量の空気清浄器を設置することで対応する予定だったが,「SLは煙があるからいいんじゃないか」と土坂総裁が一喝,敢えて換気等は行わないこととなった。SLが通るたび,丸の内線各駅の地上出口から多量の煙が上ることが予想され,環境庁が近々環境アセスメントに着手する見込みだ。

積水化学陸上部と営団東西線の相互乗り入れという異色の組み合わせも実現する。積水化学陸上部の社員は,会社寮が東西線沿線に多いことから通勤に東西線を使用しているが,小出義雄監督がトレーニングの一環として通勤をランニングで行うことを提唱,コースとして最も適していると判断した東西線の軌道を走るために相互乗り入れを申し出たもの。東西線サイドは,「高橋尚子東西線を走ってくれれば宣伝効果抜群だ」と快諾,お礼として積水化学陸上部グラウンドまでの電車の乗り入れを行うこととなったもの。
現在東西線では各駅の電光表示板の改修作業にとりかかっており,完成後には「今度の電車=快速 三鷹 10:34 次の電車=特急 高橋尚子 10:38」といった表示が見られることになりそうだ。

この他にも浅草の三社祭京成本線が相互乗り入れを検討,ボルテージの上がった神輿野郎達が全速力で京成本線を駆け抜けるといった構想も出ている。こうした乗り入れについて,「本当に利便性が向上するのか」といった冷やかな声もあるが,新タイプの相互乗り入れのニーズは強く,今日もまた新たな組合せが実現しそうだ。