大手企業に「番長」が続々誕生−会社間の縄張り争いも(2000年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。時代の変遷により現在では実在しない法人名・個人名等も登場しますのでご承知置きください。また,記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。


最近大手企業に昔懐かしい「番長」が続々と生まれ,社員の組織化を進めており,組織率の低下が続く労働組合に代わる労働者組織として注目を集めている。

住友林業住宅本部支店営業グループに勤める堀内真さんは,大手企業の番長ブームの先陣を切って99年7月に同社の初代番長に就任した。
本格的に体育会でならし,かつ生来非常に気の短い堀内さんにとって,同期45名はいずれも「まるで気合が入っていない」(堀内さん)。同期会等で集まるたびに彼らに喝を入れ,また時には腕力にものを言わせてねじ伏せる堀内さんは,同期から畏敬の念を込めて「番長」と呼ばれるようになったという。
堀内さんはその後,社内外で発生したトラブルの解決に尽力し,また言うことを聞かない若手社員を締め上げる等の活動を行う一方,営業中に拾った捨て猫を会社に持ち帰りそっとミルクを与えたり,夕陽を見て涙を流す等,心やさしい一面も垣間見せ,いつしか社内で知らぬもののない「夕焼け番長」としての地位を確立。「この会社を荒らそうとする奴は俺が許さない」と,会社にやってくる敵を次々と撃退し,住友林業の安全を守る一方,社内での自分の地位を脅かそうとする後輩が出てくると,新宿中央公園で決闘を行い相手を完膚なきまでに叩きのめし,自分への忠誠を誓わせるという番長らしい一面も持っている。こうしたこともあって,上司の言うことを聞かない社員も番長の言うことには無条件で従うなど,社員を最も強烈にグリップしている存在となっている。
そうした点に着目した同社では,ベア交渉・ボーナス交渉の相手を従来の労働組合から堀内番長に変更。当初猛反対した労働組合も,組合員からの支持が全く得られないため,やむなく受入れた。住友林業らしく角材を抱えて会社側との交渉に臨んだ堀内さんだったが,情に弱い点を突いた会社側の泣き落とし戦術にはまり,あっさりと今冬ボーナスの3%ダウンを受入れてしまった。そんな堀内さんに対して,「番長にはもっと交渉上手になってもらわないと」と言う声もあるが,大半の社員は「番長が決断したことだからしょうがない」と納得しており,会社側にしてみれば番長を交渉相手とした作戦がまんまと当たった格好。
そんな最近の堀内さんにとって,気になっているのが他の会社に誕生した番長たちとの縄張り争い。いずれも「自分が一番だ」という強烈な自負を持った番長揃い。住宅業界では「住友林業の堀内,ダイワハウスの山本,積水ハウスの西川,三井ホームの坂井」という四天王が「住宅業界の総番長」の地位を目指して激しい争いを繰り返しており,堀内さんも全く気が抜けない日々が続く。

一方,既に番長間の決着がついたのは都市銀行界。最近の大型合併における合併人事は,行員の士気に直接関わる問題だけに,全て各行の番長同士の決闘の結果で決める形となっている。例えば,決闘で三和銀行の永井番長を叩きのめした東海銀行の原番長は,三和と東海の規模関係からすると不釣り合いなくらい多くの重要ポストを確保,東海銀行本店周辺で凱旋パレードを実施した。一方の三和の行員も「番長同士が決めたことなら仕方ない」と納得顔だ。
今後の経営戦略上,「如何に有力な番長候補を多く抱えるか」がキーポイントとなることが明らかとなった今,各企業とも堀内さんのような番長タイプの人材確保を最優先する新たな採用戦略の立案が急がれるところだ。