国民投票法，試行実施が焦点に−森山直太朗さんに白羽の矢

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今国会中の成立が確実となった国民投票法の次のステップをめぐる動きが活発化している。
安倍首相の悲願とも言える憲法改正のために避けて通れないのが国民投票の具体的手続きを定める「国民投票法」の制定。13日に衆院で可決され，成立が確実となったことを受け，次のステップとして与党内で議論されているのが「国民投票の試行実施」。
法案によれば，国民投票は概ね現在の国政選挙と同様の手続で実施されることとなっているが，実際には有権者の範囲が異なる可能性があること（18歳以上），そもそも投票対象が異なること，実際にどの程度有権者が足を運ぶかが予測できないことなどから，試行実施が必要であるという意見が与党内で支配的だった。
試行には70億円以上のコストがかかる見込みであることから実施に慎重な姿勢を示す派閥もあったが，「国民投票法を成立させておきながら実務で失敗するのは許されない」として，自民党の中川秀直幹事長が反対意見を封じ込める形で試行投票実施を事実上決定した。
現在焦点になっているのは，「投票のテーマを何にするか」というもの。安倍首相周辺は「憲法改正を主眼にした手続である以上，憲法第9条の改正案で試行してみるのが適切」と主張しているが，「あまりに露骨で急進的。参院選にも響く懸念がある」という見方が強く，「政治的に中立でかつ，国民の関心を引くテーマ」を選択する方針までは決定しているという。

そんななか，中川幹事長が主張したテーマが「柿の葉寿司は葉っぱごと食べるか否か」というもの。
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「三度の飯より柿の葉寿司が好き」という，無類の柿の葉寿司フリークとして知られる中川幹事長は以前から「葉っぱも食べなきゃ柿の葉寿司じゃないだろう」と語っている。しかし自民党内の声は専ら「そんな人は見たことがない」というもの。葉っぱを食べるのが正統派であることを示したい中川幹事長は，試行投票という絶好の機会を利用してこの議論に決着をつけたい意向だ。しかし，「この議論に感心のある国民が全体の１％以上いるとは思えず，投票率が心配だ」として，幹事長以外の自民党執行部一同の判断でこの案は葬られることとなった。

次に出てきたのが，麻生太郎外務大臣の「俺の顔ってヘンか，国民に聞いてみてくれよ」という提案。
昨年11月に日経トレンディ誌が実施したアンケート「記憶に残るヘンな顔BEST10」で堂々第1位に輝いた麻生外相としては，国民全体が同じ見方をしているかどうか確認したいところ。政治色も薄いとして，当初はこの案を容認するムードが支配的だったが，これに異を唱えたのが首相周辺。「顔は政治家の命。ヘンな顔かどうかを国民投票にかけるというのは政治家の尊厳に関わる問題であり，極めて不見識」としてこれを真っ向から否定。首相周辺の本音は，このテーマでの投票を容認すれば「ポスト安倍として無視できない麻生外相の国民的人気が高まるきっかけになりかねない」というものだが，首相の意向に真っ向から反対するのは得策ではないとしてこの案も実現は困難と見られている。

現在最有力視されているのが，麻生外相ではなく「歌手・森山直太朗の顔はヘンかどうか」という案。
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先のアンケートで麻生外相に続く第2位にランクインした森山さんはその歌唱力とユニークなルックスと異様なテンションで人気の歌手。既に本人に内々打診がなされており，「テーマの内容はともかく，国民投票の対象に選ばれるのは名誉なこと」と快諾している模様だ。現在は「息子の顔面が日本中で笑いものにされるのはイヤ」と抵抗している母親の良子さんの説得に入っており，承諾が得られればこのまま試行投票のテーマとして正式に決定される見通しだ。

実際の試行投票の日程は本年10月14日（日）が有力視されている。投票2ヶ月前に正式に投票テーマが公示され，投票日の2週間前までは「ヘンな顔派」と「普通の顔派」がそれぞれ街頭演説や宣伝カー，テレビCMなどで有権者に向けて同調を呼びかける。また，1ヶ月前から投票日3日前までは政見放送に準じた形で，毎日10分間，全てのテレビ局が森山さんの顔面の静止画像を流す予定だ。さらに，全国全ての新聞に合計5回程度，森山さんの実物大顔面のチラシを折り込んで，有権者の判断材料にしてもらうことも検討されている模様。
投票日には全国48,000箇所の投票所に有権者が足を運び，候補者名ではなく森山さんの顔面写真が貼られた投票ブースで，投票用紙の「ヘンな顔である」「そうでもない」のいずれかに○をつけて投票する。午後8時に投票を締め切った後，順調に開票が進めば午後11時過ぎには大勢が判明する予定だという。

70億円をかけて追求する価値のあるテーマかどうかは別として，国民がどのような判断を示すか，海外のメディアも含めて注目が集まることは確実だ。