「たまごっち」に第二のブーム到来ーモンゴル国内で大フィーバー(2001年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報および今日の状況に合わない情報が含まれていますのでお気をつけください。



かつて日本国内中心に実に4,000万個を売り上げ,一斉を風靡したバンダイの「たまごっち」が,なぜか今遠くモンゴルの地で,少々形を変えつつも大ブームを巻き起こしている。
きっかけとなったのはモンゴル出身の大相撲力士,旭鷲山の里帰り。昨年11月の九州場所終了後故郷に帰国した旭鷲山が,日本の土産として何故か「たまごっち」を10個ほど持ち帰ったところ,これが親族や知人の間で大評判となった。この噂を聞きつけた国営玩具工場であるウルマイ工芸房がモンゴル国内でのライセンス生産を計画し,日本のバンダイと交渉。バンダイにしてみれば,今では年間売上数が5,000個にも満たなくなった「たまごっち」で再び収益があげられるというのは極めておいしい話であり,1個あたりわずか2円という破格の低ライセンス料であっさりと契約を締結した。

本年2月の発売日にはウランバートルの直営販売店に用意した1,000個がわずか30分で完売。生産が間に合わず,3月には追加販売の噂を聞きつけた市民ら2万5,000人(モンゴル国民の1%に相当)が販売店の前に長蛇の列を作るなど,この「モンゴルたまごっち」は4月までの3ヶ月間で190万個を売り上げる空前のヒット商品となった。

その最大の勝因は何といってもウルマイ工芸房による商品設計。当初,同工芸房では日本製と同一の商品製造を計画していたが,モンゴル人にとって卵は栄養源として子供から大人まで大人気の食品。これを活かさない手はないと考えた同社では,「たまごっち」のメニューに「えさをあげる」「あそぶ」などに加えて「ゆでる」「焼く」「煮る」などの調理モードを追加。「卵は育てるものではなく食べるものだ」というモンゴル人気質を重視したこの商品設計が爆発的ヒットにつながった。

街角では「たまごっち」遊びに興じる多数の市民の姿が見受けられるが,ほとんどの市民らは画面に出てくる卵をいきなり茹でてしまい,ゆで卵を作ってこれを眺めてはニンマリするという,独特の楽しみ方に夢中になっている。また,複数の裏技を駆使すると,1000分の1の確率で卵がピータンになるという秘密モードが用意されている。モンゴルではピータンは「王様の食物」として非常に珍重されており,ピータンが出現した画面を販売店で見せると,もれなくピータン1個がもらえる(引換にたまごっちはリセットされる)というサービスもモンゴルにおける「たまごっち」ブームを決定的なものにしたといえる。

本年5月には,ウルマイ出版房からいわゆる攻略本「たまごっち公式ガイドブック−ピータンへの道」が発売され,わずか1ヵ月で140万部が売れ,同国において永らくベストセラー第1位の座を保ってきた「成り上がり−チンギス汗自伝」(125万部)を抜くという偉業を達成した。これらたまごっち関連グッズの売上は510億トゥグルグ(約60億円)にも上り,2001年のモンゴルGDPを5%も押し上げる要因になるなど,同国にとってはまさに革命的な出来事となっている。

なお,日本人旅行客が現地で発見した「モンゴルたまごっち」を日本国内でオークションにかけたのをきっかけとして,本国日本でもこのモンゴルバージョンの人気に火がつき始めており,いわゆる逆輸入でこの7月中に20万個が日本市場に登場するという。こうした事態に,ライセンス料としてわずか400万円を受け取っただけのバンダイでは「軒先貸して母屋を取られた感じだ。少ないとは言え,本家たまごっちの販売に重大な影響が生じる問題であり,場合によっては政府にセーフガードの発動を働き掛けたい」と恨み節を述べている。