短期集中連載「ボブとビリーと雄山と」第1回


注:登場人物の紹介
ボブ:アルプス山中に暮らす初老の男。その正体は・・・?
ビリー:ビリー・ブランクス。全米で大人気,日本でも通販番組で火が付き,ブームを巻き起こしかけている短期集中ダイエットプログラム「ビリーズブートキャンプ」の主宰者。
雄山:海原雄山。稀代の陶芸家,書道家にして美食家。会員制料亭「美食倶楽部」の主宰者。




アルプスの麓,小高い丘の上に建つ一軒家を男が訪れた。
ビリー「・・・全く,探したぜ。こんな田舎で地味に暮らしているとはな,ボブ」
ボブ「昔の呼び名は止めてくれないか,ビリー。今はこの辺りじゃ『アルムおんじ』で通ってるんだ」
ビリー「アルムおんじだ?おいおい冗談は止めてくれよボブ!グリーンベレーで『狂犬ボブ』と呼ばれてたお前が一体どうしたってんだ?」
ボブ改めアルムおんじ「別に好きで『狂犬』と呼ばれてたわけじゃない。俺だって平穏な暮らしが欲しいんだ」
ビリー「昔はメロンソーダとチリドッグで暮らしてたお前が,チーズとパンと山羊の乳で暮らしてるとはな・・・」
アルムおんじ「それはそれとして,ビリー,最近荒稼ぎしているようだな」
ビリー「何でこんな片田舎に住んでるお前がビリーズブートキャンプのことまで知ってるんだ?」
アルムおんじ「ワンセグ携帯で通販番組を観てるとお前がしょっちゅう出てくるからな」
ビリー「・・・こんな場所でも受信できるのか?」
アルムおんじ「細かいことは分からんが,孫正義とかいう男がこの間やってきて工事して帰っていったぞ」
ビリー「・・・よく分からんが,それなら話は早い。今日ここに来たのは,グリーンベレーで同じ釜の飯を食ったお前に頼みがあるんだ」
アルムおんじ「ダイエット体験モデルならお断りだ」
ビリー「50過ぎの爺いにそんなモデルは頼まん。お前のところに娘がいるだろう。彼女を,俺の『ビリーズブートキャンプ」のメインアシスタントにしたいんだ。お前さえ許すなら今日,ロスのスタジオに連れて帰りたいんだ」
アルムおんじ「何!ハイジをビリーズブートキャンプに出せというのか!」
(続く)