居酒屋新戦略−賃貸,会議、海外進出…(2005年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報および今日の状況に合わない情報が含まれていますのでお気をつけください。


競争が厳しい居酒屋業界で最近,差別化を図るための様々な動きが目立ってきている。本日はそうした動きの中の一部をレポートした。


個室居酒屋「北の家族」は8月から,下北沢1号店で一部の個室を「マンスリー賄い付き下宿」として貸し出すサービスを開始する。
同店にとって,個室の稼動率向上は経営上の重要課題であるが,店舗立地の性格上週末に混雑が集中,他の営業日の稼働率が極端に悪化する状態が長く続いていた。こうした状況を打破するため,試みとして個室を1ヶ月単位で「下宿」として貸し出すことにしたもの。これが成功すれば,稼働率の安定化のための切り札になるとして全国的に展開する予定だ。
周辺の賃貸マンションとの差別化を図るため,居酒屋としては世界初の「1ヶ月・24時間食べ放題飲み放題」付の契約とした。家賃はこの賄い込みで7万円/月(2名用個室=1畳半相当の場合)からという破格の安さ。難点といえば夕方から早朝までの営業時間中は店内が騒がしく,安眠できないことが若干気になるが,「その分早朝から午前中は死んだように静か」(同店チーフマネージャー)というから,学生さんには問題がないだろう。なお,家賃を滞納すると強制的に労働させられることになるので注意が必要だ。



2008年の東京サミットの会場が8日,居酒屋「やる気茶屋銀座8丁目店」に内定した。
外務省筋によると,英グレンイーグルスサミットから帰国した小泉首相が3年後の東京サミットの会場・趣向検討着手を指示。同省では,首相から条件として出された①意表を突いた会場であること ②メイン会議場となる部屋とテーブルがあること ③個別会談用の個室が多数あること ④盗聴防止対策が採られていること ⑤警備面の問題が少ないこと ⑥コストパフォーマンスに優れること の6点を真剣に検討。しかし,すべての条件を満たす会場がない中,苦戦していたところ,若手職員から「昨日行った居酒屋は結構よかったですよ」との発言が出た。
同省では直ちにその居酒屋「やる気茶屋銀座8丁目店」に急行,条件チェックを開始。意表を突いた会場であることはまったく問題がなく,会議場としてはメインホールと,中央においてある20名用の民芸調テーブルが使えると判断。また同店には,通信カラオケを備えた個室宴会場も多数あり,カラオケを大音量で流しながら個別会談を行えば盗聴対策も問題なしと判断。警備面は店員に柔剣道経験者が多数いることで「問題なし」と判断,コストパフォーマンスについては飲食込みで一人当たり単価3,500円というサミットとしては破格の安さで文句なし。
以上の調査結果を携え,外務次官が小泉首相に提案。首相は,自らの任期の後のサミットということもあって「うん,おもしろいんじゃないか」と面白半分で即決,予約を入れるよう指示した。
同店では「2008年7月」という,居酒屋としては異例の先日付の予約に戸惑いつつも,3日間の貸切営業と,公式晩餐会メニューとして「大漁宴会コース」(飲み放題120分付き)30名分の予約を受け付けた。晩餐会の乾杯用に,通常は扱っていないビール大ジョッキをサービスするなど,同店としても「サミット開催という栄誉に応えるため最大限のやる気を出して頑張ります」(佐藤寛治店長)と前向きの姿勢を見せている。


本邦居酒屋としてはじめて「バチカン市国店」を9月に開店することが決まったのが「Enjoy!天狗」。
ことの発端は,本年4月に第265代ローマ教皇に選出されたばかりのベネディクト16世がたまたま読んでいた「Tokyo Walker」に掲載されていた居酒屋チェーン店の比較特集記事。
注文を受けるたびに「はい,喜んで!」と返す同店のサービス紹介記事を読んだ教皇は,「どんなに忙しくても,何を注文されても喜び,感謝を表すというのはまさにキリスト教の精神を体現するもの。また,無信心だったバイト店員を短期間でそのように教育するノウハウは,キリスト教の伝道の観点からも極めて興味深い」と強い関心を抱き,自ら極秘で来日,銀座コリドー街店を視察。
何度注文を繰り返しても尽きることのない「はい,喜んで!」に涙を流して感激した教皇は早速,本部に出向いてバチカン市国への出店を打診した。
ローマ教皇本人から「Enjoy!天狗をバチカンへ」という申し出を受けた同本部の岡本寛治店舗開発部長は「最初は誰だか全然分からなかった」と苦笑しつつも,教皇の熱意に打たれ,出店を即決。早速9月の営業開始に向けて準備に取り掛かった。
店舗建材はすべて日本から持ち込み,2週間程度で準備可能だが,問題なのは店員の確保。同本部は日本からアルバイトを派遣する予定だったが,教皇の「枢機卿たちにこの精神を体得してほしい」という強い想いに答えるため,枢機卿のうち比較的年齢の若い40名を店員として採用することを内定。「Enjoy!天狗」全店舗中もっとも平均年齢の高い(71.8歳)店舗が誕生することとなった。
現在,枢機卿たちは日本から派遣されたフリーター店員の指導のもと,生ビールサーバーの扱い方,「お通し」の並べ方,酔客のあしらい方など,厳しい特訓を受けており,午後8時過ぎになるとバチカン大聖堂の中で発生訓練が始まり,40名の店員候補枢機卿による「はい,喜んでー!」の力強い声が響き渡っているという。
パウロ2世の気まぐれバチカン風サラダ」「地ワイン『ベネディクトの涙』」などのオリジナルメニュー,「教皇コース」「枢機卿コース」「コンクラーベコース」などの宴会コースメニューの準備も着々と進んでおり,早くも9月中はほぼ予約で一杯という人気ぶりに,ベネディクト16世のボルテージは上がりっぱなしだ。次回のミサで冒頭に「ハーイ,ヨロコンデー!」と叫ぶのはほぼ確実と見られており,居酒屋とカトリックの融合がどこまで進むか,注目される。