テレビ東京のTVチャンピオンで「金融機関危機管理チャンピオン」が決定(2000年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報および今日の状況に合わない情報が含まれていますのでお気をつけください。


テレビ東京の人気番組「TVチャンピオン」で,12月中旬に放映される「金融不安をぶっとばせ!危機管理王(金融機関編)」の内容が明らかになった。



バラエティ番組としては異例の「金融庁後援」の冠がついた今回のチャンピオン戦は,金融機関が被る可能性のある様々な危機をどう乗り越えていくかというもの。1次予選から決勝までの全4戦は,バラエティに富んだ内容となっているが,参加金融機関はいずれも予想外に高い危機管理能力を発揮,非常にレベルの高い戦いとなった。



1次予選は「猛獣退治」。融資を断られた取引先が腹いせにベンガルトラ3頭を金融機関に連れて行き本店内に放つという危機を設定,各金融機関が何分でこの危機を切り抜けるかというもの。

予選をトップで通過したのは住友銀行で,1頭が乱入してきた市場管理部では,対応した職員が落ち着いた動きで素早くトラの背後を取り,急所を突きわずか12秒でトラを失神させるなど,3頭はいずれも1分以内に退治された。こうした好成績について同行では「当行の危機管理マニュアルにはこうした事態への対応策も盛り込んでおり,マニュアルD−3−114(トラの退治方法)に従い淡々と対応したもの。年1回の訓練も行っており,金融機関として当然のことをしたまで」とコメントしている。

一方,まさかの予選敗退となったのがみずほフィナンシャルグループ。旧3行の頭取は,「この危機を自分の手で収拾することで今後の発言力を強化したい」という思惑のもと,先を争ってトラに立ち向かっていったが,いずれも1分以内でトラの餌食になってしまうという最悪の結果になった。

トラ3頭の乱入で一気に経営トップを失ったみずほグループに対して,後援の金融庁では「危機管理の最前面にいきなりトップが出るというのは方法論として間違っていることを実証した良い例だ」とコメントしている。



2次予選は「ロンドン支店に至急連絡」。電話等の通信手段が一切シャットアウトされた状態で本店からロンドン支店に一刻も早く業務指示を伝える,というもの。

各行とも自家用超音速ジェット機や通信文を搭載したピンポイントミサイルの発射等により概ね6時間以内には連絡を完了させる好成績を収めたが,トップの大和銀行はわずか5秒というずば抜けた記録を残した。

大和銀行ではかつて太陽系内への店舗展開を検討していた際に効率的な通信手段の確保という観点から,全行員のテレパシー能力開発の奨励を決定,通信研修の受講料補助の他,「コミュニケーションスキル研修」というタイトルでテレパシー能力を開発する集合研修(講師・エスパー伊東氏)まで実施しているほどの力の入れ様。

ここ5年間で十分なテレパシー能力を有する行員を2,000名以上育成しており,通信手段の途絶等に極めて強い企業体質を創り上げた。後援の金融庁も「そんな凄い能力があるとは」と初めて聞いた事実に驚きを隠さない。



準決勝は「全店舗完全破壊」。本店ビル,営業店舗,電算センター,バックアップセンター等銀行の全施設を襲撃して完全に破壊してしまい,通常業務再開までの時間を競ったもの。

本店ビルや営業店舗の破壊については参加各行とも対応マニュアルを準備しており,備蓄セメント,鉄筋等の活用により概ね3日以内で店舗再建を完了したが,顧客データ等の復旧についてはバックアップセンターまで完全に破壊されたうえ,アウトプットされた紙ベースの計表類も店舗破壊で使用できない状態になっており,期限の7日以内に業務再開を果たせず失格する銀行が続出。

そんな中で最短の2日で業務再開にこぎつけたのはさくら銀行。同行は危機管理マニュアルに則り2日で仮店舗の建築を終えたが,勝利の秘密は顧客データの復元。

同行では「壊滅的な打撃を受けた場合,業務再開は手作業ベースが基本。バックアップは完全に人間の力だけでやれるのが理想」という考え方に基づき,データのバックアップ用に,各店舗ごとに3名の職員を配置している。

彼らは「BCR」(バックアップ・キャリア・ルート)と呼ばれる専門職で,配置された店舗の顧客データ等を毎日全て暗記するのが任務。いわば「人間バックアップセンター」とも言うべき存在で,各店舗の3名はそれぞれ独立して担当店舗の全データを暗記する。

3名配置しているのは,実際にデータを使用する際に記憶違いがないよう相互チェックするためであり,かつ3名のうち誰かが急死しても対応できるようにという理由だ。従って3名の安全や健康には万全の配慮が為されている。3名は店舗の地下300m前後に設置された独立した核シェルター内部で生活し,自動車事故に遭ったり水難事故に遭ったりしないよう外出も一切禁止されている。また1日3回出される食事は全て当該店舗の部店長が毒見をしたもの。

今回のデータ復旧を担当したのは旧太陽銀行に入行以来,心斎橋支店のBCR一筋で来たという佐倉俊郎さん(55)。わずか20分で78,000口座の取引内容を1件の間違いもなく支店長に伝えた佐倉さんの活躍がさくら銀行の準決勝トップ通過の決め手となった。



決勝は「小惑星が地球に激突」。小惑星が地球に接近,激突する危険をどう回避するかというもの。

たまたま12月4日に小惑星「2000RD53」が地球に激突する見込であったことから決勝のテーマとなったが, 後援の金融庁も「これは金融機関の危機管理のレベルを超えている。そもそもテレビ番組の収録なんかやってる場合じゃないのでは」とパニック気味。

この地球的危機に立ち向かった決勝進出行は本命の評判が高かった住友銀行東京三菱銀行さくら銀行は棄権)。

いずれも「小惑星激突」を危機管理マニュアルの1テーマとして取り込んでおり,住友はマニュアルM−6−096に従い,また東京三菱は「危機対応事務手続13章W−6」に従い,それぞれ小惑星を破壊すべく自行開発のロケットで担当行員(住友は関連事業部,東京三菱は総合リスク管理室)を派遣したが,結局住友銀行がロケットで体当たり,自爆することで小惑星を粉砕して優勝の栄誉を手にした。

住友銀行では「東京三菱さんは派遣行員の帰還を前提としたマニュアルになっていたため小惑星上の着陸点を慎重に探査するのに時間を費やした。当行のマニュアルは小惑星激突のような事態では派遣行員の生命など気にせず体当たりさせることとなっていたため迅速な対応が出来た」とのコメントを出した。



一連の戦いを終えて,金融庁では「我々が監督する金融機関にこれほど素晴らしい危機管理能力があることを知って驚くとともに,誇りを感じる」との長官談話を発表した。