太陽光発電で広がる波紋−科学界,農業界,スポーツ界,宗教界・・・


注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。



太陽光発電に関する画期的な発明が,世界中の様々な業界に大きな波紋を投げかけている。


きっかけとなったのは,今年5月の小さなハプニングだ。

北陸先端科学技術大学院大学(以下「北陸先端大」)の下田達也教授は,自宅の隣室で寝ている孫の優斗くん(4)の様子が気がかりだった。寒暖差の激しい日が続き風邪を引いたのか,深夜2時を過ぎても辛そうな咳が続いていたのだ。

「そうだ,ヴィックスヴェポラップ(注:胸部に塗ると呼吸が楽になるタイプの風邪薬)を塗ってあげよう」と考えた教授は,薄暗い室内で風邪薬を探し,見つけると隣室に行き,優斗くんの胸部に薄く塗ってあげた。

翌朝8時,教授が自宅2階の寝室から1階に下りてみると,優斗くんは上半身裸の姿で,快晴の空のもと,元気に庭を走り回っていた。

「風邪薬が効いてすっかり良くなったんだな」とほっとした教授だったが,その後お昼近くになっても優斗くんは元気に走り回リ続けている。
あまりの元気の良さに一抹の不安を感じた教授は,優斗くんの胸部がなぜか,茶色になっていることに気付き愕然とした。下田教授が昨晩,優斗くんに塗ったのはヴィックスヴェポラップではなく,教授が開発し,世界的にも注目を集めている「塗る太陽電池」だったのだ。


「塗る太陽電池」は,液体シリコンの研究から生まれた画期的なアイデアで,今年3月に発表され大変な話題となっており,今後の実用化に向け様々な研究が進められている状況だが,誤って人体に塗布した事例は優斗くんが初めてだ。


下田教授は走り回る優斗くんを室内に連れて行き,薄暗い納戸に入れてみると,予想通り急激におとなしくなり,その後再び外に出してみると嬉々として走り回り始めた。
さらに,朝から走り回り続けているため「雄斗,お腹が減っただろ」と聞いてみたが,「ぼく,全然お腹減ってないよ」という意外な答えが返ってきた。


こうした観察結果から,教授は「人体に『塗る太陽電池』を塗布すると,太陽光を浴びて発生する電気がそのまま人体のエネルギーとして利用され,活発な運動を可能とするほか,運動によるブドウ糖等の消費も減少するため食物による栄養摂取も不要になる」という仮説を立て,その実証実験に着手した。


約1ヶ月間,380名にもおよぶ協力者により行われた実験の結果,以下の事実が確認された。

  • どのようなヒトであっても例外なく,太陽電池を塗布すると,発生する電気エネルギーにより,体内でブドウ糖必須アミノ酸などが生成,利用される。
  • 真夏であれば1日3時間程度の日光浴により,成人男子の基礎代謝量といわれる1600キロカロリー相当のエネルギーが体内に発生する。
  • 塗ると皮膚呼吸が行えなくなるため,太陽電池を塗布できるのは体表面積の40%が限界。
  • 太陽を浴びていれば,基本的に食物からカロリーを摂取する必要は無くなる。ただしビタミンとミネラル類,水分だけは経口摂取の必要がある。


そして,この「人体太陽電池」の威力が日本中に知れ渡ったのが,7月16日に開幕した夏の高校野球・石川県予選大会だ。
北陸先端大の近くにあり,下田教授の実証実験にも協力した石川県立鶴来高校野球部が,選手全員が頭や腕に太陽電池を塗って出場したのだ。

初戦の相手・遊学館高校は甲子園出場経験のある優勝候補で,試合は4回までは圧倒的な遊学館ペース。しかし,真夏の太陽を浴び,遊学館側の体力低下が見え始めた5回に状況は一気に逆転。試合後半になればなるほど鶴来打線が火を噴き,結局事前の予想を大きく覆し,19対8で圧勝する大金星を挙げた。


このニュースは県内はもちろん,全国の高校野球関係者に衝撃を持って受け止められ,北陸先端大には「塗る太陽電池」を分けてほしいという全国の高校球児が殺到する事態となった。


強い関心を持ったのは高校球児だけではない。
8月27日から韓国・テグで開催される世界陸上に日本代表として出場するマラソン川内優輝選手(埼玉県庁)・尾崎好美選手(第一生命)らも,「マラソンには厳しい真夏の日差しを逆にエネルギーに変えられる」として,下田教授に特別に『塗る太陽電池』の提供を依頼。

7月29日に体表面の25%に太陽電池を塗ってフルマラソンの記録会に参加した川内選手は,気温34度という悪コンディションのもと,何と1時間59分22秒という驚異的な世界記録を樹立。尾崎選手も女子としては世界初の2時間10分を切るタイムでゴールするなど,太陽電池の威力が改めて証明される格好となった。


この驚異的な記録に対してすぐに反応したのが,世界陸上を主催する国際陸上競技連盟だ。
太陽電池を体表に塗る行為は完全にドーピングであり,両選手の記録は公認できない」と全否定。これに対し,自分の画期的な発明が否定されたと感じた下田教授が猛反発。
「不自然な薬物で記録を伸ばしているわけではない」「自然の恵みを人間の体内にエネルギー源として取り込むという意味では,食物の経口摂取となんら変わりはない」として,これがドーピングに該当するものではないと主張,日本陸連もこの主張を支持すると表明している。
数年前に水泳界を二分した「レーザー・レーサー」論争並みに難しい論点を含んでいるため,決着が付くまでには相当時間がかかる見通しだ。


また,太陽電池を塗布した結果,ほとんど食物を食べなくても活動できるという点について,世界の農林水産業者が「食品生産・加工・流通市場が大幅に縮小し,第一次産業が主力の国家が深刻な困難に陥る」と懸念を表明しているほか,ローマ法王ベネディクト16世も「人間の本来の姿から外れているのではないか」と発言。

世界的な食糧危機を抜本的に解消できる点で「人類史上最高の発明だ」と下田教授を全面支援する科学界と,農林水産業界・宗教界が対立する形となり,遺伝子操作や人工臓器など,科学技術を用いた人間改造がどこまで許されるのかといういわゆる「エンハンスメント論争」にまで一石を投じる形となりつつある。


「塗る太陽電池」はまだ市販されていないが,日本国内では早くもホンモノを騙る偽物が大量に出回り始めている。
「塗ったら,元気は出ないが毛が生えてきた」「太陽電池ではなく蜂蜜だったらしく,寝ている間にカブトムシが群がってきた」などの被害報告も国民生活センターに多数寄せられている模様で,同センターは「偽物被害を防ぐためにも早く,安価な本物の供給を」と訴えている。


下田教授は複数の大手企業と共同で量産方法の研究に入っており,早ければ来年2月にも市販を開始できる見通しだという。
市販される商品は,スタンダード版の塗る電池「NUL-S」,酸素透過性を高めて体表面積の90%への塗布を可能にした「NUL-O2」葉緑素搭載で光合成によるCO2吸収機能も付加した「NUL-ECO」の3種類で,価格は1リットルあたり80万円から150万円程度となる見込み。

量産化による価格低下見通し,塗る太陽電池が生んだ電気エネルギーの「再生可能エネルギー法」上の扱いなど,不透明な要素はまだまだ多いものの,世界を変える発明の今後の進展に,各界の熱い視線が集中しそうだ。