日立・重工統合の裏側−ゴーヤチャンプルーをめぐり激闘

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。



4日に日本経済新聞で報じられた日立と三菱重工経営統合構想。記者によれば,協議開始の決め手となったのは,意外にも社員食堂のメニューだったという。劇的な経営統合報道の裏側を追った。(文中敬称略)



日々厳しくなる競争環境に,買収や経営統合を考えない企業経営者はいないと言ってよい。
日立の中西宏明・三菱重工大宮英明の両トップもまた,昨夏から密かに両社の経営統合の可能性を模索し始めていた。
しかし,日本有数の大企業を率いる中西・大宮はまた,組織の巨大化による弊害も十分に理解していた。昨年7月,銀座のビアホール「ライオン」で顔を合わせた2人は「社員が心を一つにして働けないと結局,競争力のない,内向きの組織になってしまう。それでは全く意味がない」という点で意見が一致。


そこで大宮が提案したのが,「社員食堂の先行統合の検討」だ。
大宮は「社員食堂にはそれぞれの企業の風土や文化が色濃く表れている。これをもし統合できるようであれば,『同じ釜の飯を食う仲間』としてやっていけるのでは」と考え,中西がこれに賛成。「経費削減という名目で,両者の社員食堂統合を検討させて,その成果を見たうえで経営統合を進めるかどうかを考える」という方針が決まった。


2人は早速,それぞれの部下に検討を指示,昨年8月に両社による「共同社員食堂設立検討プロジェクト」がスタートした。


まず着手したのが両社の人気メニューランキングの比較だったが,いきなりプロジェクトは暗礁に乗り上げた。両社の人気トップ10メニューはほとんど重なっていなかったのだ。
カルボナーラスパゲッティが1位の日立に対し,三菱重工のダントツ1位は,日立ではトップ30にも入らないカツ丼。
「食堂がカツ丼臭くなる」と抵抗感を示す日立側メンバーと「パスタみたいな軟弱なものを食えるか」と冷笑する重工側メンバー。


両サイドの対立が深刻になるなか,唯一の光明となったのは,ゴーヤチャンプルーだ。アンケートを取ったのが8月だったこともあり,日立では人気9位,重工では6位を記録,ただ一つの「ダブルランクイン」メニューとなった。
ゴーヤチャンプルーのレシピすら共通化出来ないようでは,共同社員食堂の運営など全くあり得ない」として,メンバーはこの問題に集中して取り組むことになった。


しかし,9月下旬から始まったレシピ統一作業は難航を極めた。12月までかけてようやく使用する調味料の種類・分量で合意,また具材の豆腐についても,「木綿豆腐を1時間40分かけて水抜きしたものを使用する」ことでギリギリの妥協点を見出すことに成功した。


しかし,決定的に意見が対立したのが具材の肉類だ。「本物のゴーヤチャンプルーと言えばスパムに決まっている」と主張する日立側と,「安く手に入り食べなれた厚切りベーコンの方が絶対旨い」と譲らない重工側。


両社の対立は「先人の知恵を軽視する会社に明日はない」「安易に権威と伝統に追従する企業とはやっていけない」というレベルにまで進行,両社のメンバーはそれぞれ社長にプロジェクトの打ち切りを訴えた。
しかし中西は「この苦しみを乗り越えないと我が社の明日はない」とメンバーを叱咤激励,大宮も「小異を捨てて大同に就く道を見出すまで帰ってくるな」とメンバーの訴えを一蹴した。


帰る場所を失ったメンバーらは,不退転の覚悟のもと,合計2800時間におよぶ議論と,880回に及ぶ試作・試食を経てついに今年7月,「スパムと厚切りベーコンを2:1の割合で入れる」というレシピ統一で歴史的な合意に達した。
先人の知恵を尊重しつつ,未来に向けた新たな工夫を入れる柔軟性も併せ持つことを表したこの比率には,大宮・中西も感激し,「これならば一緒にやっていける」と,経営統合に向け,本格的な検討を始めることを約束したのだ。
そして,ここ1年近く,日立の社員食堂フロアに深夜まで明りが灯っていることを不審に思い取材を進めてきた日経新聞記者がこの事実をキャッチ,4日の報道に至ったという。


両社とも社内に慎重派を多数抱えているのもまた事実であり,今後どのように統合協議が進むかは予断を許さないが,中西は今日もゴーヤチャンプルーを食べながら「なんくるないさ〜」と至って楽観的だ。


今後の両社の経営統合は本当に実現するのか,また,さらなるメニュー統一は実現するのか,注目していきたい。