「印鑑革命」始まる

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。


印鑑業界が,歴史的な特需発生の可能性に沸き立っている。

わが国のオフィスで回付される稟議書等の書類に,「承認」や「確認済み」を表す方法として最も一般的なのは,「人印の捺印」だ。
1つの書類に捺印される印鑑の数には,その組織の風土・文化が表れると言われている。権限委譲が進んだ企業等ではせいぜい3〜5名程度で済むことが多いのに対し,中央官庁などでは案件によっては200名以上の捺印がずらりと並ぶことも珍しくないという。


こうした仕事の仕方については効率面から問題視されることが多いが,もう一つ見逃せない課題が「本人確認」だ。
通常,これらの書類への捺印では「シャチハタ」に代表される,誰もが容易に入手できるスタンプ印が利用されている。このため,本当に本人が確認して捺印したのかどうかという点で疑念が持たれるケースが少なくない。
ある同族企業の場合,稟議書に捺印する計15名のうち12名が「田中」さんであり,同じシャチハタ「田中」印がずらりと並んでいるという。
このような「責任の所在があいまい,かつ捏造リスクも高い仕組みを放置していてよいのか」という問題意識が先月,金融庁主催の「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」で示されたことを契機として,関係省庁が対応検討に入ったものだ。


本格的な対応としては,高度なセキュリティを実装した電子決裁システムの導入等が考えられるが,多くの企業がただちに導入できるわけではないため,現在,関係省庁間では「捺印用の印鑑は,世界に一つしか存在しないオリジナリティを極限まで追究したものに限定する」という暫定案を来年1月から実施させる方向で調整中だという。


この案に対して,スタンプ印各社は強く反対すると見られていたが,意外にも「基本的には賛成」という姿勢だという。
業界関係者はその理由について次のように解説する。「現在のスタンプ印は正直なところ,薄利多売としか言いようのない事業。生産年齢人口に比例するといわれるスタンプ印の売上げが今後,減少していく可能性が高いことを考えると,単価の高いオリジナル印鑑にシフトするという方向性は,業界の利益にも合致している可能性が高い」



現在,印鑑業界ではこの暫定案の実現を後押しするため,「究極のオリジナル印鑑」のサンプル作りに余念がない模様。
関係者によると,絶対に同一の印鑑にならないよう,「フルネーム・誕生日・住所・顔写真・血液型・家族情報・座右の銘・旅券番号・口癖・指紋・出身小学校および担任の先生名」などの情報を丁寧に彫り込んだオリジナル印鑑が既に試作されているという。
しかしこの試作品については,試作品モニターを務める佐藤一郎さん(45)から「こんな個人情報丸出しの印鑑は怖くてどこにも捺印できない」と否定的な意見が出されているほか,「情報を盛り込みすぎて印鑑の直径が18cmもあるので使いづらい」といった実用面のクレームも出ている模様だ。
シャチハタでは「半導体製造に用いる微細加工技術を応用して,印鑑の直径を何とか5cm以内に抑えたい」「個人情報の件については,ほとんどの人が読めないスワヒリ語表示にする等の工夫を検討する」としているが,実現した場合の印鑑1個の価格は30万円を超えると想定され,「本当に売れるのか」という懸念も出ているようだ。


これ以外にも,「最新プリンターを活用した3D印鑑」「本人の匂い付き印鑑」「本人しか知りえない秘密の暴露印鑑」等,様々なアプローチからのオリジナル印鑑が試作されている模様。
どのアイデアが本当に採用されることになるのか,そしてそのとき日本のオフィスはどう変わるのか,継続的なフォローが必要だ。