ルポ・通訳業界最前線

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。


グローバル化の進展とともに,官民とも,海外での会議や交渉が急増してきている。そうしたなか,特に重要な交渉等で活躍するのがプロの通訳者達だ。
英語や現地語に不慣れな出席者のフォローだけではなく,通訳をはさむことで発言内容を考える時間を確保するという意味合いもあり,重要な場であればあるほど彼らの活躍の機会は多い。
通訳者には,専門用語やニュアンスまで含めた正確な通訳が求められるが,競争が激しい昨今,それ以上を求めるクライアントが増えているという。
今日は,そうした通訳業界において注目を集めている人材を追った。(文中敬称略)


「通訳界の魔術師」と称される神田淳子(43)。
12カ国語にもおよぶ守備範囲の広さと通訳の正確さはもちろんのこと,クライアントが望む流れを生み出すなど,交渉を成功に導ける通訳者として,依頼が殺到している。


ドイツ企業との業務提携交渉に臨んだ某大手電機メーカーの副社長,高階功治(56)。
具体的な提携条件を詰める3度目の交渉の場で,高階は社内で練りに練った条件を持ち出した。しかし,相手は交渉を有利に進めるべく,揺さぶりをかけようと語気を強めて「とても呑めない」という趣旨の発言を行った。
その言葉を神田は,その後の交渉展開を想像しつつ,思い切ってこう訳した。
「ダメよ〜,ダメダメ」

思わぬ言葉に,高階ら日本側出席者は一様に半笑い。
高階は内心「しまった」と思ったが,この半笑いが効いた。
ドイツ側は高階らが困惑の表情を浮かべ,歩み寄りの姿勢に転じることを期待していたが,不可解な半笑いを見て「何か隠し球があるのではないか」と疑心暗鬼に陥り,その後の交渉は一転日本側ペースに終始。
絶妙のタイミングで半笑いを演出した神田の貢献が光るミーティングとなった。

神田はその他にも,わざわざラップ調に「そんな条件呑めません 単価は100円15銭一切価格は譲れません」などと通訳したり,突然「アナ雪」のメロディーに乗せ「少しも安くないわ」と歌って,価格交渉の場をなごませたりと,自由自在に交渉を仕切っている。
日本企業の海外での苦戦が続くなか,神田の活躍の場面はまだまだ増えそうだ。



正確性が売りの業界において,「直感訳」を武器として活躍するのが,TOEICの自己最高スコアが290点という「奇跡のシロウト通訳者」,玉野英雄(35)だ。
彼は世界全ての言語を日本語に通訳する(逆サイドは不可)通訳者だが,「まあ,サンキューとかメルシーとか,そういう言葉は聞き取れるんですが,それ以外は,何しゃべっているのか全然分かりません」と屈託なく笑う。
そう,彼は専ら相手の表情を読み取り,表面上はともかく,本音では何を言おうとしているのかを読み取るという異色の通訳者なのだ。
相手の本音をずばり引き出せることもあるが,当然ながら誤訳も多い。ただ,その誤訳をきっかけとして話が思わぬ方向に転び始め,予想外の成果に結びつくことが多いため,「絶対にまとめないといけない交渉では使えないが,『ダメもと』の面談では非常に使える」として,ベンチャー企業などから引張りだこになっているという。

英語で「ハロー」のつづりを正確に書けないという玉野の将来の夢は「英検3級合格」だという。



そのほかにも「動物(哺乳類・鳥類)相手の日常会話レベルの通訳能力」を武器に,動物が出演する映画・CM撮影現場で人気を博している松田絵里奈(31),ボディランゲージのみで極めて精緻な会話を成立させられる浜松龍二(41)など,一芸を売りにした通訳者達の台頭が目立つ。

今後の業界の動きに注目が必要だ。