「新三本の矢」と「一億総活躍社会」が合体−「一億本の矢」として再出発


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「掛け声倒れ」「意味不明であいまい過ぎる」等,各方面から異論が相次いでいる「新・三本の矢」と「一億総活躍社会」が,「一億本の矢」という新コンセプトに統合されることが22日,明らかになった。



これはこの日の加藤勝信・一億総活躍担当大臣の定例会見で明らかにされたもの。
大臣によると,20日に第1回が開催された「一億総活躍国民会議」において,メンバーから「もっと国民が理解できる具体的なコンセプトの呈示が必要」という意見が相次いだ。
これを踏まえて,内閣府事務局での検討を行った結果,同じくあまり評判のよくない「新・三本の矢」もこの際,合わせて整理した方がよいという議論となり,前述の結論となったという。


大臣が明らかにした「一億本の矢」構想の具体的な展開イメージは以下のとおり。

  1. 小学校就学前の子供を除く日本国民全員が,日本国の将来のために何を頑張るかという「個人目標」を設定し,これを毎年1回,居住地の市町村長に届け出る。これらの「個人目標」を日本全体で集計したものを「一億本の矢」と称する。
  2. 1年後に「個人目標」の達成状況を自己評価したシートを市町村長に提出し,担当者と面接して目標の達成・未達成を確定させる。
  3. 目標達成者については翌年1年間,消費税免除等の報奨を提供し,目標達成へのインセンティブとする。


言ってみれば国民に全てを丸投げするというこの案に,会見に居合わせた記者らは全員呆然。
「あまりに投げやりではないか」等の質問に対しても「国民一人一人が頑張る意識を持つことが大事,ということに尽きます」という回答の繰り返しに終始。
「安倍首相からも『一億本の矢』の実現を厳命されている」として,関連省庁等に指示を開始していることも明らかにした。


こうした方針に各省庁や地方自治体は困惑気味であるが,既に安倍首相のお膝元である山口県下関市では,パイロット自治体として「一億本の矢(「下関市26万本の矢」)」の試行が始まっているという。


下関市役所市民部によると,市民からは連日1万件以上の照会・相談が殺到しているという。
「小学2年生の娘の個人目標は『夕食準備のお手伝いをがんばる』で大丈夫か」「勤務先で作っている業務目標シートをそのまま提出してもよいか」「『家内安全』という目標でもよいか」等々,相談内容はバラエティに富んでおり,連日30名の職員が総出で早朝から深夜まで応対に当たっている。

こうした混乱を反映し,これまでに下関市役所に提出された3万件の「個人目標」はかなり異様な状況となっている。3万件の集計結果概要は以下のとおりだ。

  • 最も多かった「個人目標」は「ダイエット」(31%)。
  • 次いで「早寝早起き」(15%),「ゲームやスマホは一日2時間以内にする」(11%),「食べ物の好き嫌いを無くす」(7%),「電車でお年寄りに席を譲る」(4%)等。
  • 数は少ないが「大物になる」(8名),「政界再編」(4名),「ノーベル賞獲得」(3名),「新規取引先開拓年間1,000社」(2名),「アメリカ大統領になる」(1名)等の野心的な目標も含まれている。


この結果は既に首相官邸にも報告済みだという。「一億本の矢」が首相や大臣の思惑から大きく外れて,生活習慣をめぐる目標ばかりで占拠されそうな雲行きに,官邸では具体的な目標設定の指針を示す準備を始めた模様だ。


加えて,現段階ではまだ未知数なのが,目標達成/未達成の評価作業負荷だ。
下関市の場合,約2,000名の市役所職員全員が達成状況評価面接にあたっても,1人当たり130名程度をこなさなければならない。
報奨の有無に直結することから,評価結果をめぐり面接が紛糾する可能性も意識すると1人最低1時間はかかるとして,ほぼ1か月を費やすこととなり,その間市役所の全機能が事実上ストップすることになる。
毎年1か月,事実上の市役所不在となることで,市民から激しいクレームが寄せられる可能性がある一方,仮に大きな影響がなければ「市役所ってそもそも必要なのか」という議論を惹起しかねないため,同市役所関係者は頭を痛めている。


「一億本の矢」プランには以上のとおり課題・懸念が山積ながら,現内閣の突破力からすれば,来年早々には実現される可能性が極めて高い,というのが永田町関係者の見立てだ。
この政策にどのような意味があるかはさておき,そろそろ一人一人が来年,どのような目標を立てるか考え始めておいた方がよさそうだ。