クールビズ馬鹿一代②クールビズ・その光と影

注意:この記事は,将来起こるかもしれない事件を妄想を交えて記したもので,少なくとも現時点においては全く事実ではありません。実在の人物・団体・事件等にも一切関係ありませんのでご注意ください。


6月に入り,2年目の「クールビズ」が本格的に始動しつつあるが,「クールビズ採用企業に対する融資金利の優遇」など,ビジネス上の新たな動きも目立ち始めている。こうした動きの一部を追いながら,「クールビズ」がどこへ向おうとしているのかを検証した。

クールビズ保険」の導入でこの5月,クールビズ関連衣料売上高で一躍トップに躍り出たのが「紳士服のコナカ」。6月30日までに総額3万円以上のクールビズ関連衣料を購入した客を対象とした,保険料わずか100円のヒット企画だ。
クールビズはまだ歴史が浅いこともあり,「どこまでが許容されるのか」というコンセンサスが形成されていないのが実態。そのレベル感は企業によってもまちまちであり,「クールビズ導入」決定で慌てて衣料を購入したものの,実際に着て出勤してみると,明らかに社内の雰囲気に合わなかった,という悲劇が続発している。このため,当分様子見をしようということになり,これがクールビズ衣料の売上を抑える原因となっていた。コナカが提案した「クールビズ保険」は,こうした問題点を一気に解消する画期的なもの。コナカで購入した衣料を着用して出勤したが,社内で「完全に浮いている」場合には,当該衣料の購入代金相当額を保険金として支払うもの。当初は返品という案もあったが,一度着用した衣料であることを考慮して代金相当額の保険金支払いに落ち着いたもの。保険金支払いのためには,「社内で完全に浮いていたこと」の証明が必要であり,本人および同僚5名以上を含む職場風景写真3枚と,同僚および上司3名以上の連記による「完全に浮いていた」という証明書の提出が求められている。
コナカにとっては大判振舞いの制度に見えるが,大幅に売上が伸びていること,実際の保険金請求は手続の恥ずかしさのためか少数にとどまっていること,企業毎のクールビズにかかる実質的なガイドラインの情報が収集できることになり,将来の「企業別クールビズ」提案に繋げていくことが出来ることから,同社では「大成功」と判断している。「そもそも社内で完全に浮くような衣料を売るな」という声もあるが,この夏,コナカがますますクールに燃える。

クールビズの最大の弱点は,こうした取り組みに理解のない顧客に応対する際には最低でもネクタイが不可欠なこと。このため,ネクタイをオフィスに常備したり,持ち歩いたりするサラリーマンも少なくないが,意外とかさばるのが悩みのタネ。ここに目を付けたのが衣料メーカーの福助。携帯に便利で顧客に対する礼を失しないネクタイ,ということで,「ワンタッチ取付式の蝶ネクタイ」を今夏の目玉商品として売り出している。ポケットにしまえるコンパクトさと,1つ300円という低価格が受けて早くも5,000本の売上を記録しているが,実際に着用したサラリーマンからは「同僚から『ビアガーデンのウエイターのようだ』と言われた」「社内を歩いていると見知らぬ人からも生ビールを注文されてしまう」がという苦情が殺到している模様で,今後の売上急増は期待できないようだ。

一方,クールビズは移動のための自動車にも及んでいる。企業の役員専用車等の運行受託を本業とする(株)関東配車サービスでは,「車内空調の不要な車」という触れ込みで,企業に提供する車種をオープンカーに切替えていく方針を固めた。「移動中も自然の風の流れを感じてリフレッシュしてもらいたい」「クールビズに積極的な企業という対外イメージ向上にも寄与する」と同社は自信たっぷりに語っているが,採用側の企業では「車内で読んでいる重要書類が風で飛ばされると大変」「何となくオープンカーだとパレードっぽい雰囲気になり,社員が旗を振りながら出迎え・見送りしなければならなくなる」と,採用には慎重な空気だ。



一方,こうしたクールビズの動きに警鐘を鳴らす向きもいる。
「4ヶ月間ネクタイを締めないと,首回りが平均で3cm大きくなる」という衝撃的な学説を発表したのは,早稲田大学人間科学部の竹田信一教授。「長年ネクタイをしている人が数ヶ月に渡ってノーネクタイで過ごすと,首周りに脂肪が蓄積されやすくなり,秋になって通常のシャツが着れなくなってしまう可能性が非常に高い」と警告している。「ネクタイではなくてもよいが,首輪など,適度に首周りを締め付けるものを時々着用することを勧める」としており,これを受けて一部の企業ではクールビスの期間中,毎週月曜日を「首輪デー」としている。ただ社員には著しく不評で,「ただでさえ憂鬱な月曜日がさらに重くなる」「上司が首輪に犬の散歩用のリードを付けて行動を制約しようとする」など,パワーハラスメントの疑いのある訴えまで出てきており,こうした動きがどこまで浸透するかは不透明だ。

「10年後には全ての空調が禁止される」というにわかには信じ難い説を展開するのは地球温暖化評論家の矢追純一氏。「CO2排出量削減目標は今後さらに引き上げられることが確実で,28℃の空調でOK,などという生易しい対策では達成不可能。政府は,10年後までに日本国内における全ての空調(冷・暖とも)を禁止するとの情報を得ている。たかが28℃程度で上着を脱いだりネクタイを外したりしていては,来るべき空調禁止社会に耐えられない。今は暑さに慣れるため,我慢して上着とネクタイを着用すべき」と,汗をかきかき熱弁を振るう。
そんな矢追氏に「10年後の空調禁止という情報の根拠は何か」と尋ねると,自信たっぷりに「政府は公式に発表するとパニックが起こるため,じわじわと周辺情報を流し始めている。今夏のエアコンで売行きトップを記録している『10年間掃除不要のエアコン』がその第一弾だ。誰もが『10年間は便利だけどその後はどうなるんだろう』という疑問を抱いているが,メーカー側は一切答えようとしていない。こうした積み重ねで10年後の空調完全禁止に向けて徐々に国民の意識を変えていこうとする,いわば政府の機密作戦が進行しているのです」と語っている。
矢追氏は「今ノーネクタイにすれば,10年後には我慢できず,男性は相撲のまわし1つで仕事をし,来客があれば化粧回しをつけるというビジネススタイルになってしまう」と警告しているが,現在のところ耳を貸そうとする者はいない。彼が正しいのか,世間が正しいのか,長期的にウオッチしていく必要がありそうだ。