ルポ・もう一つのW杯―「職場体操」に世界中が熱狂

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。


6月から7月にかけて、世界中を熱狂させたサッカー・ワールドカップ。同時期に、世界中でひそかにサラリーマンを熱狂させていた、もう一つのW杯が開催されていたことをご存じだろうか。

7月20日(金)18時30分、東京・渋谷にあるNHKホールは、世界30か国以上からの観客約4,000名の熱気に包まれていた。
そう、「職場体操ワールドカップ東京大会2018」の決勝戦だ。

あまり知られていない事実だが、従業員の健康維持のために、始業時等にオリジナルの職場体操を行っている企業・団体は、世界125か国で70万社にも上るという。
このW杯は、これらオリジナル職場体操を有する企業を対象として、4年に1回、世界で最も健康に効き、従業員に活力を与え、また見る者を感動させる体操を決定するという大会だ。

各国における予選を勝ち抜き、本大会に進出できるのは計320社。予選に参加した企業のうちわずか0.04%という、非常に狭き門だ。
これらの本大会進出企業は、まず20社ずつによるグループリーグを戦う。審査員5名を前に、各社のキャプテンが順番に自社の職場体操を披露する。
審査員は、体操のキレ、健康への貢献度、動きの美しさ等、全部で30以上になる評価ポイントからこれらの体操を採点し、最高点を記録した1チームのみが決勝トーナメントに進む。万一体操を間違えた場合はレッドカードで一発退場となるという、極めて厳しい予選ラウンドだ。

そんな今回の厳しい戦いを勝ち抜いて、ベスト4に進出したのは以下の各社だ。

  • ポーランドの物流企業、A社。毎朝1回、1か月続けるだけで腹筋が見事なシックスパックに変わるという、驚異の職場体操で全世界を震撼させる。
  • インドのIT企業、B社。秘伝のヨガを採り入れた職場体操で従業員の健康寿命が飛躍的に伸び、100歳超の現役従業員50名も元気に世界を飛び回る。
  • 米国のレストランチェーン、C社。食べても食べてもカロリーをその場で消費できる魔法の職場体操。これを顧客にも紹介することで、店舗売上げも飛躍的にアップ。
  • 日本の銀行、D社。世界で唯一無二の「発毛効果のある職場体操」を発案、中高年男性社員の体操参加率は驚異の100%。

そしてこの日の決勝戦に勝ち上がったのは、「腹筋」のA社と「発毛」のD社だ。


まずはA社の演技。
ステージに上がったのは、まだA社に入社して1週間の社員ばかり10名。当然、腹筋は全く鍛えられておらず、ユルユルの状態の腹部がステージ後ろの巨大スクリーンに投影され、会場内からは失笑も漏れる。
そしていよいよ職場体操開始。ややアップテンポの曲に合わせて行われるその体操は、一見するとそれほど激しくは見えないが、演技を披露する社員らの額にはみるみる汗が流れ始める。そして約5分の体操が終了し、再びスクリーンに映し出された社員らの腹部に場内はどよめいた。そう、うっすらとではあるが、シックスパックらしき筋が見え始めているのだ。
同社の社長は演技披露後、「1か月続けるとプロのボディビルダーに負けない身体になれる」と力強く訴え、自身の見事な筋肉も披露し、場内の喝采を浴びた。


次に登壇したのはD社だ。
壇上には、まばゆく輝く頭部を持った社員10名がずらりと並ぶ。A社同様に、社員らの頭部がド迫力のサイズでスクリーンに投影され、場内は大爆笑。
そして始まった体操は、緩やかで心が穏やかになるタイプのものだ。生中継を行うテレビの解説者は「すごい!これは、リラックスを促すことで毛根の緊張を緩め、血行を良くする効果がありそうな体操ですね」と唸る。
少々長めの約7分の体操が終わり、再び社員らの頭部がスクリーンに投影され、今度は会場が大きくどよめいた。それぞれの社員の頭部に、1mmに満たない長さではあるが、はっきりとした黒さが確認できる、毛が大量に生え始めていたのだ。
感激する社員、そして彼らを包み込む会場からの大きな拍手。


勝戦の審査員5人が下した判定は、3対2でD社の優勝だった。
A社とD社の社員らはステージ上で、頭と腹筋を触りあいながらお互いの健闘を称え、職場体操ワールドカップ東京大会2018は成功裏に幕を閉じた。


職場体操が持つ無限の可能性を信じる世界中の企業は、今後もさらに増えそうだ。
次のシンガポール大会2022を目指した、各社の職場体操開発競争から目が離せない。