法隆寺とユニクロが提携−1400年の歴史上初の実験に賛否両論(2002年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。また,登場する企業名・団体名・個人名は実在のものとは関係なく,かつ時代の変遷と共に変化・消滅しているケースもありますのでお気をつけください。


近年の不況の影響等もあり観光客数の減少に悩む奈良・法隆寺が思い切った改革路線を発表,「伝統か改革か」で大きな議論を呼んでいる。
法隆寺は京都・奈良の寺社仏閣の中でもトップクラスの知名度を誇る。しかし,近年の不況により京都・奈良を訪れる観光客自体が減少,また訪れる観光客も日程を短縮するために訪問先を京都のみに絞る傾向が明確化。ここ数年,法隆寺では観光客数が前年比2桁で減少しており,これに伴い収入も激減する等,今後の運営に黄信号が点っていた。
こうした事態を打開するために今回決まったのが,カジュアル衣料で抜群の知名度を誇るユニクロとの提携。かつて急成長を続けてきたユニクロも,販売商品の一巡とともに売上・来店客の減少が顕著になってきており,事業の多角化とともに本業の建て直しが急務となっている。
そんなユニクロが目を付けたのが外国人観光客が多く訪れる法隆寺。同社では飽和気味の国内市場を補うべく英国・中国等に店舗を展開しているが,今後の拡大のためには海外での一段の知名度アップが不可欠。法隆寺内に店舗を構え,外国人観光客に購入してもらい,「純日本ブランド」としてのユニクロを強烈に印象付けようという戦略と,観光客誘致の材料が欲しい法隆寺サイドの利害が一致,今回の提携となったもの。
今回「ユニクロ法隆寺店」がテナントとして入るのは,法隆寺のシンボルでもある国宝・五重塔の1,2階部分。これまで五重塔は国宝であることと安全性を考慮して一般には内部を公開していなかったが,今回の提携に際してユニクロ側から「最もインパクトのある場所に店舗を設けたい」という要望が出されたため,法隆寺側で塔の補強工事を行ったうえで入店を認めた。
店内は1フロア20平米という狭さのため品揃えを限定する必要があるが,ユニクロ側では「建物の安全性も考慮してフリースなど軽量商品中心の構成としたい」としている。五重塔,夢殿,聖徳太子などをあしらったフリースなど,法隆寺店限定商品が人気を呼びそうだ。
法隆寺側では,せっかく補強工事をしたということで五重塔の3〜5階部分にもテナントを入れる意向を示している。現在のところ3,4階には100円ショップ最大手のダイソーが,また5階には回転寿司の「元気寿司」の出店が有力視されており,奇しくも現代日本を象徴する企業群が五重塔を占有する形となる。
法隆寺ではさらに,国宝の夢殿にもテナントを入れることとしている。こちらは五重塔に比べると店舗面積が確保できることから家電量販店を入れる方向で調整しているという。一時最有力だったのは「カメラのさくらや」だったが,同社のキャッチフレーズが「安さ爆発」であったため,「国宝建造物内で爆発というのはいかがなものか」という文化庁の意見を受け,ビックカメラの出店が内定した模様だ。
世界文化遺産にも指定されている法隆寺の今回の決断に対しては「伝統文化の冒涜だ」という有識者の声も強いが,一方で「そのような保守的な姿勢が今の日本の閉塞感につながっている」という経済学者の批判もあり,当分議論は続きそうだ。