注目される「故事成語工学」−温故知新の取組みを追う

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社会の諸問題の構造が複雑になる一方の21世紀。
「温故知新」の精神で,これまで軽視しがちだった先人の智慧を徹底的に学び直し,現代の問題解決に活かそうという動きが広がっている。
今日は,その動きをリードする東京工業大学の取組みを紹介する。



東京工業大学に平成21年4月に新設されたのが,「故事成語工学科」だ。
先人から現代人に贈られた「智慧の塊」とも言えることわざ・格言等を,科学的かつ分野横断的な目線で徹底的に分析し,現代人がまだ気づいていない新たな知見や教訓を抽出しようという意欲的な学問分野だ。
研究対象とすることわざ・格言別の専攻コースが設けられており,現在は全部で30のコースに計110名の学生が在籍している。



「豚に真珠専攻コース」に在籍している鈴木友香子さん(22)は,このことわざが表面的には実は誤りであることを突き止めるという「大発見」をした。
豚に,様々な品質・サイズの真珠を見せた際の脳波の動きを調べ続けたところ,高い価値の真珠を見せられたときの方が脳の興奮度が高いことが確認されたのだ。
「ものの価値が分からない人」の喩えとしては間違っていることが判明した今,鈴木さんの関心は「このことわざが真に意味しているのは何か」に移っており,これを突き止めるべく「豚にダイヤモンドを見せる実験」「猫に真珠を見せる実験」「豚に念仏を聞かせる実験」などに,連日深夜まで取り組んでいる。



「2階から目薬専攻コース」では,このことわざを構成する要素を徹底的に分析,現代人が認識している「もどかしく,効果がない」という意味を超えた秘密の発見に取り組んでいる。
このことわざが生まれた時代の目薬の成分を再現し,その使用感を体験してみる実験,1階・2階・3階から目薬を投下した場合に眼球が受ける水圧の違いや,薬滴が受ける空気抵抗の変化を調べる実験,そもそもなぜ2階から階下の人に目薬を投下する必要があったのかという史実の検証等に取り組んでいる。
これまでの研究により,江戸時代後期の京都の「お座敷遊び」に起源があるらしいことが判明しており,現代までこのことわざが語り継がれた理由を調べる旅はまだまだ続く。


「出る杭は打たれる専攻コース」では,そもそも地中深く打ち込んだはずの杭がなぜ出てくるのか,という土木工学的見地からの研究や,「出る杭を打つ主体は誰なのか」「なぜ打ちたくなるのか」「どれくらい打てば気が済むのか」という社会心理学的研究などがクロスオーバーしている。
これまでの研究の結果,「出てしまった杭を放置するのは危険であり,これを元の位置に戻すのは正しい行為である」という学説が有力になっており,「なぜネガティブな意味のことわざとして現代に伝えられることになったのか」という史実関係の分析に研究の重心が移りつつある。



こうした東工大の研究成果が現代社会の諸問題解決に直接寄与するまでには,まだ数十年の時間が必要だと見られているが,「今後伸ばしていく分野」として,25年度以降は1学年当たりの学科定員を現在の30名から200名まで増やす予定だという。
東工大の戦略は当たるのか,また卒業生の進路はどうなるのか,今後も注目が必要だ。