日本人、海中への民族大移動開始 ― きっかけは花粉症対策

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。

 


花粉症対策グッズの開発を手掛ける小さなベンチャー企業の発明が今、日本人の「生き方」そのものを劇的に変えようとしている。


昨年10月1日。ほのかに肌寒さを感じるようになった早朝の神奈川県・三崎の海岸で、10名の男女が海に入ろうとしていた。彼らはダイバースーツを着用しているものの、頭部はむき出しのまま。よく見ると、鼻孔に白い鼻栓状のものを詰めているのが見える。そう、彼らは花粉症対策の開発を主業とするベンチャー企業「ヘイクション」の社員と、開発された商品のモニター達だ。


日本人の多くを悩ませる花粉症については、症状を軽減する手法が毎年開発・報告されている。
最近は鼻腔内にワセリンを塗布する方法なども注目されているが、抜本的な症状解消には至っていないのが実情だ。
こうした現状を打破したいと考えた同社では、徹底的な分析と議論を重ねた結果、「花粉の影響がほぼ無視できる海中で、人間が生活し続けるためのツールを開発する」というアイデアに社運を賭けることに決めた。


そして、約2年の開発期間を経てついに完成したのが、先ほどの鼻栓状の物体だ。
これは、水中の酸素だけをフィルターで抽出して人体に供給するという、いわば「人工えら呼吸器」とも言えるものだ。
ダイバーが通常利用する酸素ボンベでは、せいぜい数十分しか海中に滞在できないのに対し、こちらの器具を装着すれば、メンテナンス無しで最低5年間は海中に連続滞在できるという。


この日、商品の実用試験を成功裏に終え、達成感に浸っていた社員らだったが、モニターとしてこの実験に参加したAさんの一言が、同社の方向性を大きく変えることになった。
「ずっと海中にいれば、確かに花粉症の問題は解決しますが、仕事や日常生活はどうなるんですか」


当然と言えば当然の指摘だったが、同社社員は激しく動揺した。
「商品開発だけじゃ、自己満足に終わってしまう」
「これを使いこなせる社会を作り上げないと、目標を達成したとは言えない」
「しかし、どうやればいいのか・・・」
途方に暮れつつも、社員らは開発過程で築き上げた各方面とのネットワークも活用しながら、対応策作りに奔走した。

 


そして、三崎海岸での実験から半年あまりが過ぎた今年4月10日、同社と、その趣旨に賛同し協力した計38社の代表者らは、晴れやかな表情で記者会見の場に立っていた。
「2020年3月、花粉症と無縁の人生を、海中で快適に送ることができる総合サービスの提供を開始します」


まずは酸素問題。
開発した鼻栓があれば酸素は確保できるが、今後、海中で生活する人間が急増すれば、海中の酸素濃度が低下することが懸念される。海中酸素の多くは、海藻の光合成により発生していることから、海藻を安定的に繁殖・増加させる技術が求められていた。
この問題を引き受けたのが、「ふえるわかめちゃん」でおなじみの理研ビタミンだ。
高度な研究開発技術を持ちながら、来る日も来る日もわかめスープ製造に明け暮れていた同社社員らにとって、社会的意義のある大事業への参画は願ってもないこと。
理化学研究所から継承された同社の高度な研究開発力を投入した結果、少なくとも東京湾内で3,000万人の人間が海中で生活するのに必要な酸素を安定供給できる、海藻類の人工繁殖実現に目途を付けたのだ。


仕事については、在宅勤務ならぬ「海中勤務」を可能にする切り札として「超完全防水型タブレット」の開発に成功したのがNECだ。
海中でPCやタブレット等を使ううえで致命的な問題となる「防水性」「電源」「通信」の全てをクリアした、驚くべき製品だという。
オメガ社の協力のもと、水深8,000mまで耐えられるハイレベルな防水性を備えたほか、海中に射し込む微弱な太陽光や潮流をエネルギー源に利用できるバッテリー、海中でもワイヤレスの高速通信を可能とする水中光WIFIを標準装備。さらに、5年間海中で使用し続けても表面にフジツボや苔が付かない加工も施されているという。
NECでは、「海中で仕事をすれば、絶対に紙の資料を使わなくなりますよ」と、なかなかペーパーレス化が進まない企業に対しても、海中での業務運営を提案していく予定だという。


海中で生き抜いていくには、サメ等の凶暴な生物から身を守ることも重要な課題だ。
これに応えたのが、ダイバースーツのBREAKEROUTと、アーティストの草間彌生氏だ。
スーツの表面に、草間氏が得意とする毒々しい水玉模様を大々的にあしらうことで、サメ等に「危険生物」と誤認させ、近寄らせない効果を狙ったものだ。
草間氏のデザインには「生理的に受け付けない」という拒絶反応を示す者も多いのが難点だが、「海中での危険生物回避効果は絶大」だとして理解を求めていくという。


これら以外にも、食事・運動・ショッピング・健康管理・移動・コミュニケーション・政治活動・医療・冠婚葬祭等、海中生活に必要なあらゆる分野で協力各社が解決策を打ち出しており、これらすべてが実用化される2020年3月には、まず1万名程度が東京湾の海中で生活できるようになるという。
海中への人間シフトが進むと、陸上では住宅・オフィス需要が減少し、公共交通機関も利用者も減少する等、あらゆる分野にわたり劇的な影響が発生することになる。


今回の記者会見での発表を受け、菅官房長官は「令和の時代にふさわしい革命的事業だ」と高く評価するコメントを出したが、中央官庁では「全く想定していない事態で、行政としてどう対応すべきか分からない」と混乱と困惑が広がっている。
本件を所管すべき官庁についても「花粉症が発端なのだから厚生労働省だ」「いや、東京湾が舞台だから海上保安庁だ」「海のことなら水産庁に任せるべき」等々、様々な意見が対立している模様だ。

 


花粉症対策のために海中で暮らすことで何を得て何を失うことになるのか、単に花粉が少ないとされる北海道への移住ではダメなのか等々、今後の議論の動向に注目が必要だ。