世界のグルメ界に激震走る―キャビア・トリュフが世界3大美味の座から転落(2001年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。また,登場する企業名・団体名・個人名は実在のものとは関係なく,かつ時代の変遷と共に変化・消滅しているケースもありますのでお気をつけください。


フランス料理界の巨匠として知られるポール・ボキューズ氏がその生涯を自ら綴った最新刊「シェフ馬鹿一代」が世界のグルメ界に激震をもたらしている。
ボキューズ氏は,3月に世界同時発売された同書の中で,自分は「フォアグラはともかく,キャビアとトリュフは食べて美味しいと思ったことが一度もない」という衝撃の事実を告白。「自分はトリュフを使ったオリジナルレシピだけで500皿以上を作ってきたが,こんなものを美味しいという客を密かに軽蔑してきた」という告白にフランスのグルメ界は大きく動揺した。
しかし,ミシュランガイドブックの主任調査員の一人であるサントス・アントワーヌ氏が「実は自分も昔からトリュフとキャビアが3大美味に挙げられることに違和感を感じていた」と賛同の意を表明したのをきっかけに,同様の意見が世界中の料理関係者から続出。彼らは一様に「自分だけがおかしいのではという不安から言い出せずにいたが,今回の告白で本当に勇気づけられた」とボキューズ氏の英断を賞賛している。
ボキューズ氏はキャビアとトリュフを世界3大美味の座から追放することを提案,高級感を失わせるため,キャビアのことを「鮫卵」,トリュフのことを「丸きのこ」と呼ぶことも合わせて提案している。


突如として3大美味のうち2つが消え去るという事態に,世界の料理界は「キャビアとトリュフは外しても,やはり3大美味と呼ばれる存在がないと料理界のムードも沈滞する」という意見で一致。早くも後継美味の座を巡り激しい駆け引きが始まっている。
2つの座席のうち,1つを獲得するのが確実と見られているのが中華料理の食材。
先月開催された中国の全人代全国人民代表大会)で李鵬・常務委員長が「世界は,中華4000年の歴史と伝統を無視することはできない」という演説を行っているが,これは3大美味の座獲得に向けた中国の強固な意思を世界に示したものという解釈が料理界では有力だ。北京では各国大使が呼ばれ,3大美味の座の獲得に向け周到な根回しが始まっている模様。海燕の巣やフカヒレ,熊の掌等,候補も数多くいずれが選ばれるかには議論の余地はあるものの,3大美味の一角を中華の食材が占めることについては世界中のコンセンサスが概ね得られた状況となっている。
もめそうなのが残る1つの座席。イタリア,タイ,インド,ブラジル,ロシア等40以上の国・地域がお国自慢の食材を世界3大美味に加えようと強烈な運動を進めている。日本もその1つで,現在国内でどの食品・食材を世界に向けてアピールするかの選考が進められている。最近の食品を巡る失政の影響からか,その選考状況はリアルタイムで国民に公開されている。
今のところわずかにリードしているのは,九州・福岡の辛子明太子。大手製造販売業者である「やまや」は,今回の騒動の発端となったポール・ボキューズ氏が1986年に日本を訪問した際,料亭で『やまや』の明太子を食べ,あまりの美味さにどんぶり飯を8杯平らげたという実話を紹介,「世界が認めたプチプチ感」として支持を訴えている。農林水産省厚生労働省でも,「キャビアに代わる魚卵の美味として違和感も少ないのではないか」と,評価は高いようだ。
他の有力候補として挙げられているのは,静岡県浜松市三立製菓が誇る銘菓・「源氏パイ」。同社の松島邦保社長は,「当社の源氏パイは,モンドセレクション(ベルギー・ブリュッセルを本部とする世界食品コンクール)で5回連続金メダル受賞という世界唯一の偉業を達成した伝統ある銘菓。世界3大美味に加えられるのにこれ以上ふさわしい食品はない」と記者会見で主張。客観性を重視する官邸サイドは「実績を示されると説得力がある」と乗り気だ。
しかし,「フォアグラ・フカヒレ源氏パイ」という新・世界3大美味の組み合わせには違和感から難色を示す関係者も多く,また同じ浜松市内の銘菓「うなぎパイ」の方が美味しいという異論も出るなど,実現の可能性は高くはなさそうだ。
いずれにしても,日本代表候補の選出までにはもう少し時間を要する見込み。

今回の一連の騒動を受けて,各国の市場ではトリュフとキャビアの取引価格が暴落しており,一方で候補として名前の挙がった「辛子明太子」や「源氏パイ」には「一度食べてみたい」と世界中から引合いが殺到する等の影響が出始めている。
世界の常識が簡単に覆されることを示した好例と言えそうだ。