福袋商法が多様化−人事政策にも応用(2000年)


注:このコーナーは,1998〜2005年の「日本警戒新聞」に掲載されたバックナンバーの一部を紹介するものです。時代の変遷により現在では実在しない法人名・個人名等も登場しますのでご承知置きください。また,記事内容については他の記事同様,相当多量の偽情報が含まれていますのでお気をつけください。


流通各社の新年初売りの目玉である「福袋」セールの内容が明らかになってきたが,今回は個人消費の落込みを意識して,「消費者に新鮮な驚きと喜びをもたらす」という,福袋の原点を意識した企画が目立っている。また,福袋の発想を小売以外の分野にも採り入れようという動きもあるようだ。
池袋三越では,「これが本当の福袋だ!」と題して,2階婦人服売り場で5,000円・1万円・3万円の3種類の福袋をそれぞれ1,000個用意する。肝心の中身は,人気ブランドの婦人服およびアクセサリーが中心だが,「お客様をびっくりさせる」という趣旨で,同フロアで扱っていない商品を各袋に1点だけ詰めている。同店福袋企画チーム主任の斎藤雅司さん(29)は,「福袋チーム全員で店内をくまなく回り,いろいろ良いものを集めてきました。きっとお客様に喜んでもらえると思います」とにこやかに語りながら,1万円の福袋の中に,フェンディのマフラーでくるんだ活ロブスターを詰めていた。この福袋作業部屋は,ほかにもアクセサリー類と一緒に生きたミズダコや赤ナマコ,うなぎ等を嬉しそうに5,000円福袋に詰める女性社員らの歓声で深夜まで熱気にあふれていた。
幕張に第1号店を開店したばかりの仏カルフールは,早速「福袋」商戦にも参入。日本や韓国,中南米の一部にしか見られないとされるこの独特の福袋商法に対してカルフール幹部は興味津々で,「何でもごちゃまぜにして売ってしまうという発想が面白い」と,現在内容を検討中だ。ただ,慣れない商法だけにやや混乱している面もあるようだ。福袋の試作品として,同店の強みとされる「パン+フリース+電化製品」をセットにした福袋の製作を指示したが,現場主任が趣旨を勘違いし,パンの生地にフリースや小型電化製品を練り込んで焼き上げたものを作ってしまうというハプニングもあったという。
一方,福袋の発想を別の面で活用しているのがプロ野球読売ジャイアンツ。金銭トレード要員3名を大型の紙袋に詰めた「日本一記念!夢の金銭トレード福袋」を2億円で他球団にオファーした。内容については「福袋だから詳しいことは言えないが大物ベテラン野手1名,大物ベテラン投手1名,中堅内野手1名」としており,早速交渉に訪れたオリックスのスカウト陣は袋の上から中身を触り,「この贅肉のつき方は,槙原に間違いない」と内容分析にとりかかっている。ジャイアンツでは「早く買わないと中身の選手が窒息死または餓死してしまうよ」と他球団をあおっており,商売の上手さを指摘する声もある。今回の福袋が成功すれば「第2弾以降も検討したい」(関係者)としている。
こうした福袋の利用方法は一般企業の人事にも及んでいる。住友生命では,従来の人事異動を全て取りやめ,異動対象者に対して人事部付異動を発令する形式に改めた。人事部に集められた異動対象者はそれぞれ1名ずつ福袋に封入されたのちシャッフルし,配属先部署の総務担当者が中身の分からない福袋を割当人数分持ち帰るという仕組みとなった。この狙いについて,同社人事部では「予想もつかない異動の実現で組織に新鮮な緊張感を与え,活性化を図ることが目的である」としている。12月の異動で,金融法人部の総務担当者が新任部長として持ち帰った福袋には岡山支社から異動してきた入社2年目の松本宏文さん(24)が入っており,思いもよらぬ抜擢人事となった。逆に役員寸前の上級管理職がいきなり一担当者になってしまう例も出ており,「個々人の能力や業績が全く反映されない人事はおかしい」という批判も出ているが,同社人事部では「運も実力のうち」と相手にしない構えだ。同様の人事スタイルは徐々に他の企業にも広がりつつあり,年末だと思って気を緩めているといつのまにか袋詰めされて見知らぬ土地に搬送されていた,ということになりかねない時勢となってきた。