「クールビズ詐欺」の被害拡大−西日本の金融機関男性行員が「丸刈り」に

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クールビズを実施した企業に排出権を付与する」という偽造文書による詐欺事件が波紋を広げている。

発端は昨年10月,西日本の有力地銀であるA銀行に送付されてきた1通の文書。環境省金融庁連名の文書は,我が国の温室効果ガス削減目標達成のために官民による一層の努力が必要なことを訴える内容。併せて,クールビズの効用が国際的にも広く認められたことから,2006年10月以降,クールビズの実施度合いに応じた「みなし排出権」を各企業に付与(排出権取引市場での転売も可)する旨が記されていた。
付与される排出権は,「クールビズ(半袖・ノーネクタイ)衣料を着用している社員数×クールビズ導入月数×0.3トン」(CO2換算)とされている。季節が夏季に限定されていないことから,1万人規模の企業が年間を通じてクールビズスタイルで過ごせば,36,000トン相当の排出権を手に入れることが出来る計算となる。一般に,温室効果ガス1トンの削減のために要するコストは12万円程度とされており,このケースであれば40億円以上の効果があるということになり,また,転売による利益獲得も可能となる。
文書を受け取ったA銀行総務部では「なぜ通年で認められるのか」という点がやや気にかかったものの,官民一体となった地球温暖化防止対策推進の一環であると考え,「排出権転売による利益向上にも繋がる」として,早速9月で終了したばかりのクールビズを復活させた。
その1週間後には新たな文書が届いたが,その内容は「半袖・ノーネクタイに代えて,上半身を『ランニングシャツ』にすれば2倍,さらにスラックスを『半ズボン』に変更すれば3倍,加えて頭髪を『丸刈り(自然現象によりこれに近い髪型となっている場合も含む)』にすれば4倍の排出権を認める」というもの。「大幅な収入向上のチャンス」とみた同行では,全男子行員に協力を要請,その結果9割以上の男性行員が「ランニングシャツ・半ズボン・丸刈り」スタイルでの勤務に賛意を示し,12月にはほぼ全ての男性行員がこのスタイルでの勤務に移行した。
これに驚いたのが,同行とシステム面を中心に業務提携関係にあるB銀行。昨年12月にA銀行本店を訪れた同行幹部は,出迎えたA銀行頭取が「裸の大将・山下清」スタイルであることに唖然としたが,事情を聞いて「当行も早く追随せねば」と本年1月から同様のスタイルを導入。これら有力地銀の取組みを見て,西日本の各金融機関が続々追随を決めたもの。今年の西日本の冬は記録的な暖冬であることも手伝って,山下清スタイルでの勤務は男性行員の多くから歓迎され,瞬く間に定着した。


こうしたなか,本年2月にA銀行に金融庁による検査が入り,行員が異様な姿でいることに不審を抱いた検査官が理由を質したことから,送付された文書が偽造であることが発覚したもの。検査官から「なぜ文書の真偽を確かめずに丸刈りを急いだのか」と厳しい指摘を受けた同行では,既に排出権転売益を見込んで発表していた業績予想の上方修正を取り消すなど,対応に追われた。記者会見で責任問題を追及された同行頭取は「既に頭は丸めているのでこれで勘弁してもらいたい」と自嘲気味に語った。
金融庁のまとめによると,今回の被害にあった金融機関職員は約3万名に上っているという。「3万人の山下清」を生んだ史上稀にみる詐欺事件の犯人については,衣料メーカー関係者説や,理髪店店主説など諸説入り乱れているが,決め手となる物証も少なく,検挙できる可能性は低いとみられている。


一方で,こうしたスタイルは「気取らない格好なので,建前ではなく本音での議論・折衝をしやすくなった」(A銀行行員)という意見もあり,行内コミュニケーションが円滑になり,顧客にも好感をもって受入れられているという。また,B銀行では「真冬の薄着で身体が鍛えられたのか,この冬に風邪などで欠勤する行員が激減し,健康保険組合が支払う医療費も大幅に減少した」という予想外の効果も生んでおり,「排出権は得られなかったが,代わりに大事なものを得た」(B銀行幹部)と,今後もこのスタイルを継続している方針だという。

今夏の本当のクールビズでは,この「裸の大将」スタイルが主流になるとの見方も出ており,まだ丸刈りになっていない東日本の金融機関の対応が注目されるところだ。