短期集中連載「ボブとビリーと雄山と」第3回

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それから1ヵ月後,東京にて。

ビリー 「ここか,ユーザンの経営するジャパニーズレストランは・・・ヘイ,ユーザン!ユーザン!」

おチヨ 「先生,何だかわけの分からないマッチョな人が玄関で叫んでるんです,どうしましょ」

海原雄山 「おい,中川!ちょっと見てきてくれ」

中川 「何だ,騒々しいな・・・む,あ,あいつは・・・!」

ビリー 「!あなたは・・・プロフェッサー・ナカガワ!」

中川 「ビリーじゃないか。なぜこんなところにお前が来るんだ」

ビリー 「・・・『史上最も峻厳なグレーンベレーの教官』と呼ばれた貴方こそ,一体何を?ここは『泣き虫ユーザン』のレストランじゃないのですか」

中川 「ふっ・・・『泣き虫ユーザン』か。そんなあだ名もあったな。だが今はユーザンは私の師匠だ」

ビリー 「!貴方がユーザンの部下??」

中川 「・・・ナイフじゃ勝てても,包丁じゃかなわないってことだ

ビリー 「いろいろあったんでしょうが,とりあえず中に入って何か食わせてくれませんか」

中川 「ビリー,この美食倶楽部は会員制なのだ。会員本人,または会員の紹介がないと利用できないのだ」

ビリー 「何だって?じゃあ会員にしてくださいよ」

中川 「入会待ちの人間が150人もいて,少なくとも5年以上は待つ必要があるぞ」

ビリー 「5年だって!そんなに待ってたら『ビリーズブートキャンプ』のブームが終わっちゃうぜ!」

押し問答を続ける中川とビリーのもとに向かって,聞き覚えのある足音が・・・ドスドスドスドス・・・

中川 「あ,あの足音は先生の・・・!」

ビリー 「何だって!じゃあユーザンに会えるのか!」

そこにいきなり般若顔で現れた雄山。

雄山 「中川!何だこのスズキの洗いは!食えたもんじゃないぞ!」

中川 「は,申し訳ございません,一体どこがお気に召さなかったので・・・?」

雄山 「そんなもの,食えば分かる!・・・はて,お前はどこかで見た顔だな・・・」

ビリー 「ユーザン,久しぶりだな。すっかり泣き顔よりも怒り顔のほうが似合う風体になったな」

雄山 「ビリー,ビリーか!」

ビリー 「ユーザン,今日は頼みがあって来たんだ。とりあえず,飯でも食わせてくれないか」

雄山 「グリーンベレーでは毎日スニッカーズを10本も食ってたお前が美食倶楽部の料理をだと!ふっ,それじゃこのスズキの洗いを食べてみて何がいけないのか言ってみろ。正解なら美食の極みの懐石を食わせてやる」

生魚は本当は苦手だが,引き下がれないビリーはスズキの洗いを一口食べてみた。

ビリー 「ん?美味いが,何だか風味が変だ・・・,そう,タバコの臭いがする!」

雄山 「・・・正解!よくわかったな」

ビリー 「日本語を勉強するために渋谷のマンガ喫茶で読んだ『美味しんぼ』第3巻がいきなり役に立つとは・・・」
美味しんぼ (3) (小学館文庫)

かくしてビリーは美食倶楽部で夕食をご馳走になることになった。

(第4回に続く)