会議の議事録が激変−会社法等の改正で


注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。


会社法等の改正により,取締役会等の議事録作成の自由度が飛躍的に高まることが決まり,早くも先行的な取組みが始まっている。


これは,「日本を元気にする規制改革100」の一つとして盛り込まれたもの。
「規制改革100」は,具体的な中身を決めないまま,9月に名称だけが閣議決定されており,その後順次内容を決めてきたが,若干足りないため「数合わせ」の観点から,本件が盛り込まれた模様だ。


株式会社の取締役会議事録の記録方法・内容等は会社法施行規則101条ほかで定められており,わが国の諸会議の議事録の大半はこのスタイルに則っている。
しかし,「文章が堅く,当時の議論の温度が伝わらない」「細かなニュアンスが分からない」といった批判がしばしばなされており,「ポイントを突いた議事録」の作成が本邦法人共通の悩みとなっていた。

この現状に対し,今回の会社法施行規則改正は,「議事録フォーマットの完全自由化」という思い切った決断を下したものだ。
改正案作成に当たった法務省では「堅い文章で表現するだけが議事録ではない。自由な感覚で,取締役会の空気を的確につかんで表現すれば,コーポレート・ガバナンスの観点からもメリットが大きい」としている。


この法改正の施行は来年4月からだが,早くも先行的な取組みが始まっている。


11月19日に開催された三菱重工業株式会社の取締役会。
役員会議室のテーブルには,毎回出席の取締役18名に混じって,「北斗の拳」などで知られる漫画家の原哲夫氏が着席した。
そう,同社は世界でも例のない「まんが議事録」作成にチャレンジしようとしているのだ。

同社の大宮社長はその狙いについて,こう語っている。
「会議と言うのは発言内容もさることながら,その時々に役員がどういう表情をしたかという,場の空気も重要。ビデオでもある程度判断できるが,情報量が多くなりすぎる難点がある。その点,漫画化してしまえばポイントが絞られて,かつ空気感がきちんと残せる」

そして白羽の矢が立ったのが,メリハリのある作画能力で定評のある原哲夫氏だった,というわけだ。


この日の取締役会が始まると,早速原氏は周囲の取締役たちの表情を見渡しながら,用紙にすらすらと鉛筆を走らせ,下書き作業を始めた。描写対象人物,大きさ,描写角度などを恐るべきスピードで決めていく。原氏の脇には2名のアシスタントが控え,1名は発言内容を書き取り,もう1名は会議のその時々の空気感を「ビシッ」「シーン」「ドッ」「グワーン」などの効果音として書きとめていく。

取締役会が終わると,原氏らは会議室に持ち込んだ製図机に移り,ペンを入れ,吹き出しにせりふを貼り付ける,と言った一連の作業工程をスピーディにこなしていく。
そして会議終了からわずか3時間で,50分間の取締役会を記録した26ページの作品が完成した。

この日の議題「A社買収に関する件」をタイトルに取り入れたまんが議事録「A社買収の拳」は早速,取締役全員に未定稿として送付され,チェックを受けた。
「本物より3割カッコ良く描く」という原氏のポリシーのせいか,原稿を見た取締役たちは一様に「お,俺も結構イイ男に描かれているな」と至極ご満悦の様子。

しかし,A社買収に内心反対だったB取締役だけは顔色を失った。
取締役会でA社買収のメリットを熱く語る社長に対し,下を向いて冷笑を浮かべていたB取締役の様子を原さんが見逃さず,見開き2ページという大画面でその表情を激しく描写していたのだ。
さらに,実際には発言していないにもかかわらず,「ふん,こんな案件がうまくいくわけが無い・・・」という心の中の独白までが書き込まれていた。

一方,会議中にB取締役の表情の変化を見逃さなかった大宮社長の様子も,次ページに4段ぶち抜きのどアップで描かれており,吹き出しには同じく心の中の独白が書き込まれていた。

「お前は既に死んでいる」

B取締役はこの「まんが議事録」への署名捺印をあくまで拒否する構えだが,それ以外の全員は「こんなにあの場の空気が的確に描かれるとは思わなかった」「世界に誇れる議事録だ」と絶賛の嵐。
B取締役は署名するも地獄,せざるも地獄という窮地に追い込まれている。


同様の「まんが議事録」の取組みは数社で検討されている模様だが,誰に作画を依頼するかにより議事録のトーンが大きく変わるため,漫画家の選択は慎重に行われているようだ。
東京電力では,真剣な議論の様子を描き出せる「ゴルゴ13」のさいとう・たかを氏を選ぶか,親しみのある取締役会をアピールできる「アンパンマン」のやなせたかし氏を選ぶかで激論が交わされているという。

また,ソニーでは,自社の技術力の粋を結集させ,3D技術に「会議の流れ」を可視化する技術を加えた世界初の「4D議事録」を作成する方向で検討している。
第一生命は持ち味を生かして17文字の「川柳議事録」作成準備を始めるなど,業種を問わず議事録自由化の動きは広がりつつある。


取締役会の議事録を自由に閲覧するには株主になる必要があることから,議事録をユニークにすることは安定株主確保にもつながる。
今後,この動きがどこまで広がり,一方で海外からどのように評価されるのか,注目が必要だ。