コーポレートガバナンス最前線
注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。
昨今のコーポレートガバナンスをめぐる議論で、大きな潮流となっている「社外の目線」の導入。最適な姿を追い求め、独自の試行錯誤を繰り返す企業も少なくない。
今日はそんな中から、際立った動きを見せる2社の取組みを追った。
10月某日。
大手自動車会社であるA社の取締役会は、会議開始から3時間が経過し、午後5時を回ろうとしていたが、今後の経営方針をめぐる議論が白熱していた。
議論に敢えて口を挟まず、目を瞑って聞いていた社長がおもむろに口を開いた。
「アレクサ、ここまでの話、どう思う?」
そう、A社では9月から取締役会のオブザーバー的存在として、AIアシスタントである「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」を採用、会議に同席させることにしたのだ。
社長の呼びかけに、Alexaは即座に反応した。
「後半の議論は、同じ話の繰り返しでした。時間の無駄です」
「会議室には11名いますが、全く発言しない人が4名います」
「一番影響のあったのは、午後3時47分のCさんの発言です」・・・
続けてGoogleアシスタントにもコメントを求めると、こちらもすぐに自動音声で応えた。
「Alexaの分析は正しいです」
「このまま議論を続けた場合に予想される結論は『引き続き皆でしっかり議論していこう』です。終了予想時刻は午後5時31分です」
窓から差し込む夕陽が、呆然とした取締役達の顔をオレンジ色に染めていく沈黙のひとときが続いた後、取締役会はそのまま終了した。
社長は、これらAIアシスタントの活動を高く評価しているという。
「鋭い指摘ばかりではなく、時々ヘマをやらかすところも憎めない。議論で出た喩え話を勘違いして、勝手に出前を発注、取締役会に突然「花巻そば」11人前が配達されたこともあったが、ひょっとしたら場の雰囲気を変えるための高等な戦術だったのかもしれない」
社長は「自分以外の11名を全部AIアシスタントに替えてしまったら、どういう議論がされるか試してみたい」と公言しており、他の取締役を動揺させているという。
大手IT企業として知られるB社では、「一見非合理に見えるものの中に真実へのヒントが隠されているかもしれない」という発想のもと、経営アドバイザリーボードに5名の新メンバーを追加した。
それぞれの肩書は「風水師」「占星術師」「手相家」「姓名鑑定士」「霊能者」だ。
当初は、いわゆる指名委員会に「手相家」「姓名鑑定士」を登用することも検討したというが、「あまりに未知数で、株式市場の反応も読めない」として、まずはアドバイザリーボードでの採用となったものだ。
新メンバーが加わった10月のミーティングでは、B社の買収戦略に対する評価が議論の中心となった。
風水師は、
「これまで買収してきた各社の所在地を地図上にプロットして線で結ぶとこうなる」
「今後新たに、このあたりに所在する企業を買収すれば、当社に非常に良い気が流れてくる」
この地にある代表的企業である、「株式会社 東京ひよ子」の名前を挙げた。
この提案には、出席者から異論が続出。
「IT企業たる我々がなぜ菓子製造業者を取り込むのか」
「もともと『ひよ子』は福岡銘菓なのに、勝手に東京銘菓を名乗り、あげく、製造拠点が埼玉とはどういうことだ」
「姓名鑑定の観点からは、『ひよ子』よりも『ヒョコ』の方が良い」
等々、議論の錯綜と紛糾が続き、結局結論は出なかったが、同社の社長は「異質なメンバーを加えることで、思いもよらない議論ができた」と非常に満足した表情で、5名の新メンバーと握手した。
何が正解なのか、誰も分からない、誰も知らない世界で、今後どのような試行錯誤が続けられることになるのか、引き続き注目が必要だ。