五輪開催決定で変わる日本のインフラ

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2020年の東京オリンピック開催に向けて,日本のインフラが大きく変わり始めた。
今回は,その端緒ともいえる「交通標識等の多言語表示」の動きを追った。


9月11日に安倍首相と猪瀬東京都知事が会談,五輪開催に向けて交通案内や飲食メニューの多言語表示を推進することで一致。猪瀬知事は「都庁を挙げて抜本的な対応を迅速に進める」と会見で述べた。


これを受け,都庁の五輪開催事務局が早速用意した案は,外国人が多く集まるスポットでよく見られる「日・英・中・韓」の4ヶ国語表示を一層促進すべく,都条例で努力義務を明記する,というもの。

しかし猪瀬知事は,「日本を変える五輪を支えるインフラを作る,という気概が全然感じられない」とこの案を一蹴。
「今度の五輪は,日本が大きく変わり,さらに変わろうとしていることを世界に知らせる千載一遇の機会。少なくとも,世界人口の8割程度の人が理解できる多言語表示を実現させろ」と事務局に命じた。


困惑した事務局は,外務省や東京外国語大学に協力を求め,一体何ヶ国語を表示すれば,世界の8割の人が理解できることになるのかを調査。その結果,「50ヶ国語」という恐るべき結果が明らかになった。
事務局は「これは実現不可能だ」と直感したものの,猪瀬知事が容易に納得しないことから,交差点や高速道路でよく見られる道路案内表示板の「50ヶ国語対応版」を試作し,その実物を見せることとした。


一般的な交差点手前の道路案内標識は,縦2.2m横2.8mの表示板に縦横30cm〜50cm程度のサイズの文字が表示されている。

まず,この表示板サイズを変更せずに50カ国語表示を行う試作版を製作したところ,文字サイズが14ポイント(縦横5mm)となった。これを50m以上離れたところから読むには「視力6.0以上が必要」(新宿アイクリニック)であるのに加え,表示板が文字だらけになるため「自分が読める文字を探し出すのに時間がかかりすぎる。まるで『ウォーリーを探せ』のよう」(都庁事務局)という状況となった。
もう一つの試作品は,文字を小さくせず,表示板を大きくするというもので,試作したところ,表示板が縦25m・横30mという,8階建てビルに匹敵する巨大サイズとなった。表示板があまりに重過ぎて,道路上に設置する際には表示板1枚につき支柱が30本も必要になるとの試算結果も出た。


これら2つの試作品を実際に見せ,「50ヶ国語による交通案内は不可能」という結論を猪瀬知事に報告したが,知事は「多言語表示は首相との約束。多少の不便があっても実現させろ」と再度強く指示。
都庁事務局ではやむなく,50ヶ国語表示の超大型道路標示版の第1号を環状7号線の大森東交差点に設置する方針を固め,地元関係者の説得に着手している。


一方,飲食店メニューの多言語表示もまた,難しい問題をはらんでいる。文字が極小サイズになる(またはメニューが巨大化する)という問題に加え,日本特有の料理名・素材・調理法などをどう表現するか,という問題が存在するからだ。

都内の飲食店からは早くも都庁に対して,膨大な数の「翻訳相談」が寄せられている。

  • 「当店独自の注文方法である『野菜増し増し』はどう翻訳すればよいか」(ラーメン二郎

  • 「麺の茹で具合の呼び名『ハリガネ』は直訳でよいか」(博多一風堂

  • 「『冷やし中華』を翻訳すると,『中国を冷遇する』というように理解されてしまい,日中関係に悪影響を与えないか」(都内中華料理店多数)

22日の記者会見で,これらの質問・相談への対応について問われた猪瀬知事は「これは国際化に向けた生みの苦しみだ。都庁に頼らず,自分の頭で考えてもらいたい」と突き放す姿勢を示した。



猪瀬知事は,「まずは多言語表示からスタートするが,より重要なのは都民が,来日する観光客を様々な言語で案内できるようになることだ」として,東京都が運営する「首都大学東京」の全学部について,26年度新入生から「第1〜10外国語」までの10ヶ国語を必修科目とすることを明らかにした。
その他,都内の公立小・中・高校についても,最低5ヶ国語を話せるようにカリキュラムを全面改訂させる意向だが,「そもそもそれだけの教員を確保できるのか」「人にやらせる前に,知事自身がもっと英語を勉強しろ」という声も上がるなど,実現の見通しは不透明だ。



英語のみならずミャンマー語ポルトガル語タガログ語クロアチア語などを流暢に話す都民が普通に見られる2020年がやってくることになるのかどうか,注目が必要だ。