エスカレータの適正利用に「ペースメーカー」導入―他分野にも応用広がる

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。

 


「利用者は左側(もしくは右側)に寄り、急ぐ人用に通路を空けておく」のが長年のエチケットとされてきた、エスカレータ利用の慣習。
エスカレータ上の歩行は、接触や転倒による将棋倒しのリスクが高く、鉄道各社では、「2列静止利用」を強く呼びかけているが、一度染みついた習慣を変えるのは容易ではなく、全く効果が出ていないのが実情だ。
そうしたなか、窮余の策として東京メトロが導入した一種の強硬策が注目を集めている。
エスカレータ専属ペースメーカー」の導入がそれだ。


近年の国際マラソン大会では、「1Kmあたり○分○秒」など、契約で決められたペースで、25~30㎞地点辺りまでを目途に先頭を走る「ペースメーカー」が採用されることが多い。レース前半でペースが乱れることなく終盤の勝負に入れるため、好記録が出る確率が高いとされている。


今般東京メトロが導入したのはまさにこれで、2名一組のペースメーカーがエスカレータに並んで乗り、降りるまで静止状態を続けることで、強制的にエスカレータ上の歩行を防止する役割だ。


10連休明け後の5月7日午前7時、長峰幸洋さん(35)と松井将太さん(29)が、東京メトロ永田町駅に姿を見せた。彼らは同社が採用した30名の第1期ペースメーカーの一員だ。
早速、上りの長いエスカレータに並んで乗ると、それぞれしっかりと手すりを掴み、「何があってもここを動かないぞ」という姿勢を強く示した。1分かけて終点に到着すると、そのまま今度は下りエスカレータに乗り、再び横に並んでじっとしたまま下まで降りていく。
この日、長峰さん・松井さんの通称「ナガマツペア」は、途中10分間の休憩を何度か取りながら、朝7時から夜9時まで上下を繰り返したという。その結果、同駅のエスカレータでは、ナガマツペアが離れた後も2列静止利用が続いているといい、東京メトロではその効果に自信を深めている。
今後、6月までの間に東京メトロ全線全駅(143駅)を対象に、計300組・600名のペースメーカーが採用、配置される予定だという。
なおペースメーカーは平均して1回の勤務で、エスカレータの上下を500回前後繰り返すことになるため、彼らの健康にどのような影響を与えるか等「適切なモニタリングを行いながら運営していきたい」(同社)としている。

 


東京メトロでの絶大な効果発揮を受け、鉄道他社でも相次いで導入検討が進められているほか、全く異なる業界においても、このアイデアを応用した取組みが始まっている。

 


大手コンサルティングのA社が、クライアント各社での導入を強力にプッシュしているのが、「会議ペースメーカー」だ。
これは、会議のタイムマネジメントを的確に行い、コストに見合った議論と結論を導かせるというものだ。
会議5分前になると、出席予定者それぞれのデスクに、専属のペースメーカーがやってくる。そう、「会議ペースメーカー」はマンツーマン対応だ。
いつまでも自席を離れようとしない出席者がいる場合、ペースメーカーは襟首を掴んで定刻までに間に合うよう、出席者を強制的に会議室に連行する。
そして定刻に会議が始まると、本来発言すべきタイミングで黙っている出席者に対しては背後から蹴りを入れ、発言が長すぎたり的外れだったりした場合は、後ろから口をふさぐことによりストップさせる。
こうして会議を予定時間内に収め、適切な結論に導くのが会議ペースメーカーの役割だ。マンツーマンのため会議室内が非常に混雑する、人件費が2倍になる等の懸念点はあるが、「とりあえず現在5社が試行導入している」(A社)という。

 


大手企業の社員食堂運営等を担っているB社が実証実験を進めているのが、「昼食ペースメーカー」だ。
従業員満足度を高めるうえで重要な要素となっている「社員食堂」だが、その利用者の不満の筆頭は「いつも混雑している」という点だ。座席数を増やせば解消されるが、実際にはスペースの問題等で困難な場合がほとんどだ。
「昼食ペースメーカー」は、利用する社員らの食堂内での滞留時間を適正化し、回転を高めることで混雑を緩和させることが主な役割だという。

社員食堂に入ってくる3人連れ。そこに、さりげなく1名のペースメーカーが忍び寄ってくる。そして、気が付くとその3名と一緒のテーブルに座り、一見すると「4人組」のような体で食事を始めるのだ。
ペースメーカーは、健康上適切だとされるペースで黙々と昼食を食べ続ける。そして食べ終わると、他の3人の食事の進み具合を全く気にすることなく、周囲で空席を探している他の社員に「ここ4名分の席が、あと1分で空きまーす」と大声で叫ぶのだ。
席を探していた新たな利用者がすぐに近くまでやってくるので、残る3名もやむを得ず、急いで食べる羽目になる、というものだ。
この取組みについては、「慌てて食べることでの健康への悪影響」「食べ残しの増加」等を懸念する向きもあるが、「走りながら考える」(同社)と、あくまで前向きに実証実験を続ける方針だ。

 


人にペースを決められながら生きていくことが本当にいいことなのか、それぞれが考えながら歩き、働き、食べていくことが重要な時代となりそうだ。