変わりゆく政治資金パーティ ― 失言問題契機に

注意:この記事には,現時点において事実ではない情報が大量に含まれています。記事中に登場する法人名・個人名等は実在のものとは一切関係がありません。その点をご理解のうえお読みくださるようお願いいたします。

 

政治資金規正法に則る形で開催されている、いわゆる政治資金パーティの風景が様変わりし始めている。
昨今の失言問題が引き金となった、この動きを詳しく追った。


これらのパーティは、政治家が活動資金を集めることを主目的として開催されるもので、政治家個人が開催するケースや、いわゆる派閥単位で開催するケースなどがある。
そのパーティの盛り上がりは、ホストたる政治家の実力や人気のバロメーターにもなっている。そのため、各パーティでは総理大臣をはじめとする閣僚等、政界の実力者を多数招き、壇上で挨拶してもらうのが一般的だ。壇上で挨拶するのは5~10名程度が通常だが、中には20名近い来賓挨拶が続くものもある。
近年頻発している、政治家による「失言」問題の半数以上は、この政治資金パーティにおける挨拶で発生している。

 

その理由について関係者はこう分析している。
「パーティ冒頭で挨拶する総理や各派閥の長などはいいんです。しかし、何人もの挨拶が延々と続くと、場内の空気もかなりざわついたものになります。そうした状況で挨拶することになる初入閣クラスの大臣や副大臣政務官などは、注目を集めるために余計なリップサービスをしてしまい、これが失言になるということです」

 

相次ぐ失言に対して、「党内の引き締め」を総裁から指示された自民党執行部は、こうした分析結果を踏まえて手を打ち始めた。

 

自民党執行部では当初、各パーティでの挨拶は3名以内とすることで失言を防止するという原案で調整を行おうとした。
しかし、壇上で自身をアピールする機会を失うことになる中堅議員らが一斉に猛反発。これを受け、執行部では再協議を行い、「アピールの機会は認めるが、失言につながるスピーチは認めない」という方向で調整することとなり、最終的に「政治資金パーティでの挨拶は3名以内、ただしスピーチを伴わない壇上でのパフォーマンスについては制限しない」という内規を設けることで決着した。


この内規を受け、副大臣政務官ら、スピーチの機会を失う代わりにパフォーマンス披露の機会を与えられることになった代議士らが一斉に始めたのが、パーティで披露するための「隠し芸」の練習だ。


6月6日、東京・永田町の自民党本部。朝7時前だというのに、7階の会議室前のエリアは緊張感に包まれていた。この日集まっていたのは党所属の副大臣政務官ら45名だ。
緊張気味の代議士は一人ずつ会議室に呼び込まれていく。
「次、外務副大臣、A君、入ってください」
アナウンスを受け、室内に入ったA副大臣の前に並んで座っているのは、党幹事長・政調会長・総務会長の重鎮達だ。
準備が整うと、進行役を務める岸田政調会長が声をかける。
「じゃ、さっそく隠し芸を見せてください」
そう、この場は、副大臣らが政治資金パーティで披露する「隠し芸」の審査会場なのだ。


当初、隠し芸などのパフォーマンスの内容については議員らの自主性に任せる、としていたが、6月5日のあるパーティの壇上で、複数名の議員が「清酒一升一気飲み」「熱々おでん対決」などを披露。
このパフォーマンスをYoutubeで見た有権者らから「アルコールハラスメントを誘発しかねない暴挙」「食品を粗末に扱うとは何事か」といった批判が殺到、パフォーマンスの撤回と謝罪に追い込まれるという事件が発生したため、執行部として「あらかじめ隠し芸の内容を確認、審査する必要がある」という判断に至ったものだ。


党3役の前に立ったA副大臣は、さっそく、著名投資家のジョージ・ソロス氏が慈善パーティの場で披露して有名になった伝説の一発芸「ワルシャワの一夜」を演じた。
わずか5秒の一発芸終了後、党三役がそれぞれ発言した。
「これ、何が面白いの?」
「あまりにも短すぎて、座が持たないね、これだけじゃ」
「このクオリティじゃ、ソロスに失礼だよ」

かくして、A副大臣が満を持して披露したこの隠し芸は「党非公認」という烙印を押される結果となった。


一方、7日には、隠し芸練習に熱中していた某省政務官が、衆院の委員会開始時刻に遅刻するという失態も発生。
政務官は委員会の場で謝罪したが、野党議員らは「委員会よりも大事だという隠し芸をここで見せてみろ」と要求、やむを得ず政務官は練習中の隠し芸「プッチンプリンVS茶碗蒸し」を披露したものの、あまりの完成度の低さに与党議員からも批判が殺到、重ねて謝罪させられるという事件まで発生した。


自民党本部では、あまりにクオリティの低い隠し芸が多いことに失望が広がっており、「今後の国政選挙立候補者の党公認条件の一つとして、ハイレベルな隠し芸を持っていることを加えてはどうか」といった議論まで出ている模様だ。


目的と手段を混同し、目指すべき方向を見失っている感のあるこの混乱が、今後どう収束していくことになるのか、注目が必要だ。