「十二支」全面刷新へ―2021年から新「十六支」適用、「還暦」は60歳から80歳に
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日本人の人生観に深く影響してきた、いわゆる「十二支」が抜本的に見直される方針が公表され、各界に衝撃が走っている。
これは、1月15日の官房長官記者会見で明らかにされたものだ。
「従来の十二支を全面的に刷新し、全く新しい『十六支』を導入、令和3年からスタートさせます」
「この変更に伴い、還暦も大きく変わります」
「子(ね)」「丑(うし)」「寅(とら)」「卯(う)」「辰(たつ)」「巳(み)」「午(うま)」「未(ひつじ)」「申(さる)」「酉(とり)」「戌(いぬ)」「亥(い)」の12種類からなる十二支。
年賀状シーズンにしか意識しない国民が大半とはいえ、日本人の心に深く根付いた文化であるだけに、「なぜ変える必要があるのか」という質問が記者から相次いだ。
官房長官は、「還暦が社会の現状にそぐわないものになってしまっているのが、今回見直しのきっかけだ」と説明した。
いわゆる十干十二支の組合せが一巡する60年を「還暦」とし、人生の節目としてお祝いする風習は昔から全国に伝わっている。
赤いちゃんちゃんこを着せられる対象者は、この日を境に「お爺さん」「お婆さん」と呼ばれることが多くなるのが常だった。
しかし平均寿命が80歳を大きく超え、年金受給開始年齢も段階的に引き上げられ、定年制の見直し等も進む現代社会においては、60年は「人生の節目と呼ぶにはあまりにも早すぎる」(厚生労働省幹部)という声が年々強まっていた。
このため、「還暦」となる年齢をもっと引き上げられないか、という問題意識は政府関係者の間で広く共有されていたという。しかし、長年の文化・風習が根底にあるため、手つかずのまま今日に至ったのが実情だ。
そんな状況に大きな一石を投じたのは、意外にも小泉進次郎・環境大臣だった。
昨年スペインで開催されたCOP25で、日本が抱える様々な制約ゆえに、何ら成果を挙げられないまま無念の想いを抱いて帰国した小泉大臣は、それ以来、「環境関連分野で、今の日本が世界をリードできることは何か」を、環境省の若手職員を交えて真剣に議論し続けてきた。
そしてそこから生まれた提案が「生物多様性尊重の観点からの十二支の見直し」だ。
現在の十二支は、哺乳類10・爬虫類1・想像上の生物1という構成になっているが、「あまりにも哺乳類偏重ではないか」というのが小泉大臣の主張のポイントだ。
大臣は「全世界の生物の種類において、哺乳類はごく一部に過ぎず、動物の7割は昆虫である、とされている。十二支に生物多様性の観点を入れ、全面的に見直しを行うことで、世界的課題の一つである生物多様性の維持に日本が本気になっていることを示したい」と関係者に熱く訴えたという。
そしてこの提案は、政府・与党関係者をうならせた。
「十二支の見直し趣旨を勘案すれば、採用する生物の数を増やす必要がある。十二支を十六支まで増やすと、十干十六支となり一巡するのに80年を要する。そうすれば現在の平均寿命にも近くなり、年金受給開始年齢を将来的に80歳まで遅らせる布石にもなる」というのが関係者の受け止めだ。
「環境問題を担いつつ、年金問題にも明るい小泉大臣ならではの戦略的な提案だ」と、与党内では小泉氏を再評価する声もあがっている模様だ。
「来年、令和3年の干支は、『鶴』であります」
この日の会見で、官房長官は「令和」発表の時と同じスタイルで、新しい干支16種類を順番に紹介していった。
2021年= 鶴(鳥類)
2023年=カブトムシ(昆虫)
2024年=猫(哺乳類)
2025年=松(植物)
2026年=竹(植物)
2027年=梅(植物)
2028年=亀(爬虫類)
2029年=シイタケ(菌類)
2030年=昆布(海藻類)
2031年=サンマ(魚類)
2032年=カエル(両生類)
2033年=ホンビノス(貝類)
2034年=トンボ(昆虫)
現在の十二支は全て落選となり、哺乳類が16種中わずか1種となるなど、まさに生物多様性を色濃く反映したラインナップとなっている。
ただ、あまりにも脈絡のない選定結果に、記者からは「どのようなプロセスを経てこれら16種に決まったのか」「日本を象徴する植物である『桜』が入っていないのはなぜか」という質問が出たが、「年末年始に事務方が文書廃棄作業を実施したため、記録は残っていない」との回答に、会見場内はざわついた。
官房長官は、今後詰めるべき課題として「厄年の扱い」「来年以降還暦を迎えるはずだった国民に対する経過措置」等をあげたが、記者からの「そもそも十二支を政府が勝手に変更するというのは、あまりに不遜ではないか」という質問には「何ら問題は無いと確信しており、批判は全く当たらない」と応えるにとどまった。
来年の「鶴年」はともかく、再来年の「カニ年」以降は、企業トップ等が年始式や賀詞交歓会で、干支にからめてどのような挨拶を行うことになるのか、注目が必要だ。